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【書籍化&コミカライズ】もふもふの神様と旅に出ます。神殿には二度と戻りません!  作者: 四季 葉
第三章 追撃者たち

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銀の小箱

空を見上げれば、暗闇の空には小さな星が輝くのみ。

今日は、月が見えなくなる新月の晩で辺りは闇に包まれていた。


人が寝静まる深夜でも屋敷の周りには警備の人間が松明を持ち、敷地内を巡回している光景を見ることができる。


「予想通り・・警備の人数やっぱり多いですね・・」

――まあ、こんなところだよ。


憂鬱そうなティアに対し、フィヌイは子狼の姿で軽い口調で答えたのだ。


大きな狼の姿では小回りは利かず動きにくいので、この姿をとっているらしい。


「フィヌイ様のその姿・・白に近いので目立ちませんか? いつもやっているように、周りから見えないよう姿を隠した方が・・」

――それは、大丈夫。いざとなったら迷い込んできた子犬のフリをすればいいんだから。

「はぁ、そうなんでしょうか・・」


どうして自信満々なのかはわからないが。神様なのだから心配はないだろうとティアは納得することにした。

ちなみにティアの今の格好は全身黒づくめ。長い髪は頭の上でまとめて、黒いローブに着替え、顔を隠している。

さすがに修道女の格好で、この屋敷に不法侵入するわけにもいかない。



そう、ティア達は数日前に見ていた屋敷へと潜入したのだ。

この屋敷の主は、商業都市ディルを牛耳る有力な大商人。八人のギルドマスターのうちの一人、アドラ・ネーシュの邸宅だったのだ。


アドラ・ネーシュは、貿易商として一代でここまでの富と財産を築いたいわゆる成金で、調べていくと悪い噂ばかりがでてくるのだ。

例えば、取り扱っている商品は正規のルートだけでなく盗品などにも手をだしたり、犯罪組織とも繋がっているとか、この国では禁じられている人買いなども裏で行っているというものだ。


なんか噂ではとんでもない人のようだが、出来ることなら噂通りでないことを心から願うばかりだ。


――う~ん・・どうやら、二階が怪しいみたいだ。


フィヌイ様は髭をぴんと張り、鼻をひくひくさせ空気を嗅ぐ仕草をする。


二階に向かう階段には人影はなく、小さな燭台の明かりが揺れるのみ。

こんな夜中だから使用人の姿も見かけない。たまに警備の人が近くを通ることもあるが、見つかることなくスムーズに進むことができた。


これも、フィヌイ様の加護があるからだろう。

やがて屋敷の奥にある部屋の前に来ると、フィヌイ様はぴたっと足を止めたのだ。


――ここだね。この部屋で間違いなさそうだ。

「扉には鍵が掛かっているみたいですね」


ティアは扉の隙間を覗いてみると、錠のようなものが掛かっているのがうっすらと見える。


――部屋の中には人がいる気配はないね。それに壁は石で造られているしこれなら入れそうだ。ティア、力を使ってみて!

「は、はい」


ティアは壁の一部分に意識を集中させる。すると次の瞬間、フィヌイ様と一緒に部屋の中へと移動していたのだ。


「壁も元通りだし、成功したみたいですね」

――うん、いいんじゃないかな。


フィヌイ様は、満足したように尻尾を振っていたようだ。

明かりはなく真っ暗だったが、次第に目も闇に慣れていき、

部屋の中を見渡せば、幾つもの調度品や宝剣などが飾られ、所々に豪華な箱なんかも置かれている。

どうやら――宝物庫のようだ。

フィヌイ様は、何の迷いもなく障害物を器用にジャンプしながら進んでいく。

そしてとある銀の小箱の前に来ると、はたっと動きを止めたのだ。


――この中にある・・間違いないよ!


とても嬉しそうな声だ。

ティアも調度品の障害物を避けながらやっとフィヌイに追いつくと、棚の上に置かれてある、手に収まるような銀の小箱を見つめたのだ。

そっと指先で触れてみるが、箱には損傷はなくとても綺麗で、鍵が掛かっているようにも見えない。


「この銀の小箱でいいんですね」

――うん。


フィヌイ様が頷くのを確認すると、ティアは恐るおそる箱を手に取り、蓋を開けたのだ。

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