計画はしっかりと
――ふ~ん、ティアってああいうのが好みなんだ。
気がつけばフィヌイ様が、頬を膨らませてじーとこちらを見つめていた。
「好みとかそういうのじゃなくて・・なんか、気になっただけで・・確かに、ちょっと格好良かったなあって思いましたけど・・」
――ほら、やっぱりね。
「い、いや、だから違いますてっば・・!」
わらわらと慌てるティアをしばらく眺めてから、
――ふっふふ・・まあ、冗談はこれくらいにして、
「え?」
なんか無駄に体力を使ってしまい、ティアはげんなりと肩を落とす。どうやら、フィヌイ様にからかわれていただけのようだ。
――真面目な話。僕の神力に共鳴してティアの魔力もずいぶんと強くなってきているようだね。この建物、ずばり当たりだよ。
「え・・つまり、ここにあるんですか?」
――そう、聖遺物はこの屋敷の中にある。
「なんか・・全然自覚なかったんですけど、そうだったんですね」
――無意識でも場所を特定できたのは・・ここ最近、聖女としての力が飛躍的に上がってきているんだよ。
ティアは褒められて最初は照れてしまったが、だが、よくよく考えてみると本当にふか~いため息がでて、遠い目になってしまう。
「フィヌイ様のベルヒテス山での教え方、ほんとうに何度も死を覚悟しましたから・・」
――ふふふっ、その修業の成果を、今度は本格的に試してみようか!
「それって・・まさか」
フィヌイ様は耳をぴんっと立て、目をキラキラさせると、
「もちろん、この屋敷に潜入して聖遺物を取り戻すんだよ!」
「やっぱり・・」
ティアは諦めたように肩を落とす。
遠い目をして、近々不法侵入することになる屋敷を眺めたのだ。
まずは下調べからだよね。できる限り念入りにしなければいけないだろし、フィヌイ様が切望していることだ。叶えてあげなければ・・
現実として、捕まれば牢屋に放り込まれる。・・神託が下ったから聖遺物を取り戻しにきたと言ったところで、頭のおかしい奴と思われ、誰も信じてはもらえないだろう・・
だが、それも仕方のないことだと思いティアは腹をくくることにする。
そして・・子犬を相手に、百面相をしている変わった娘の姿は、街の中では人目をひいていた。
すぐ近くの通りを母親に手を引かれ歩いていた子供が立ち止まり、ティアに向かい指をさし母親に尋ねたが、母親は、はいはいと言いながら子供の手を引いて足早に去っていく。
また、通行人の何人かは怪訝な顔をしながらもコソコソと話したり、また別の通行人は奇妙な娘とは関わり合いになりたくないとばかりにその場をそそくさと去っていく。
そして近くには、ティアが気になっていたあの男の姿もあったのだ。
男は、ティアと白い子犬の姿を黒い瞳に焼きつけるように見ると、静かにその場を去っていったのだ。




