空の下での朝食
昨日言われた通り、ティアは朝起きると眠っている子狼姿のフィヌイ様をふんわりと毛布に包んだのだ。そしていつものカバンにそっと入れる。
窓を見ると金色の朝の光りが差し込んでいた。
今日もいい天気になりそうな予感がする。すると心が晴れやかな気持ちになってくるから不思議だ。ティアは宿をでると地図に示されている目的地へ、朝食を買うために元気よく向かったのだ。
まだ朝ということもあり、人通りは夕方に比べるとそれほど多くはないようだ。街のあちらこちらで、小鳥がチュンチュン鳴いている。
フィヌイ様ご指定の目的の屋台は、ふわふわの甘くていい匂いがしたのですぐに見つけることができた。
後はフィヌイ様が食べたいと言っていた物があるかどうかだが・・店員さんに聞いてみると残りは少ないがまだあるそうなので、ティアはほっと胸を撫で下ろす。
まだ、目当ての物は売り切れてはいないようだ。
あんなに、食べたがっていたのに無いのはさすがに可哀そうだしね。
この近くには、朝食を売っている屋台はいくつか出ていたが、他のところに行くのもめんどうだし、ティアもここで朝食を買うことにしたのだ。
ちょうど、近くには公園もありベンチもある。ティアはそこで朝食をとること決めたのだ。
石で作られだベンチに座ると、傍らにそっとカバンを置く。
フィヌイ様が目覚めるまで、ぼんやりと公園の樹木や花々をみながらそこで待つことにしたのだ。
しばらくの間、ぼんやりと景色を眺め静かに耳を澄ませていると、
すうぴぃ~すぅー・・・
フィヌイ様の寝息が聞こえてくる。
カバンの中を静かに覗くと、耳が垂れて気持ちよさそうに眠っている。やっぱり眠る姿も可愛いなあとティアの心はほんわかと和んでいく。
だがふと気がつくと、わずかに口から舌の先が出ているのだ。
猫の舌はざらざらしているが、イヌ科の動物の舌はどうなっているのか、ふと気になったのだ。
だが、神様に向かってそんな罰当たりなことをするなんてできない・・でも、なんかすごーく気になるが今は必死で我慢する。
そうだ。気を紛らわすため空でも見ることにしよう。今日は晴れて青空も見えるし、涼しい風が吹いているなあ~としばらくそうやっていると、
フィヌイ様がカバンの中からもぞもぞとでてくる気配がしたのだ。
カバンから外に出ると、前足と後ろ足を念入りに伸ばしてから、ぶるぶるっと体を震わせる。
気持ちよさそうに欠伸をすると、ティアの顔を見つめたのだ。
――おはよう、ティア!
「おはようございます。フィヌイ様、よく眠れました?」
――うん、よく眠れたよ。
そう言うと、尻尾をひと振り。
ティアは包みを取りだすとフィヌイの前に広げたのだ。
「これで、良かったんですよね」
包みの中からはバターと菩提樹の蜂蜜がたっぷりしみ込んだオムレットを取りだす。あれから時間が経ってしまったが、まだほんのりと温かい。
フィヌイ様は目を輝かせると、
――そう、これが食べたかったんだよね!ありがとう、ティア。それじゃ、いただきます~
言うが早いか美味しそうにもぐもぐと食べ始めたのだ。
その光景を微笑ましく思いながらも、もう一つの包みを開けてみる。
こちらは甘さ控えめの生クリームとカスタードが入ったオムレットがでてきたのだ。
朝食としては、どうかとも思ったがたまにはいいだろう。
ティアもフィヌイと一緒に仲良く食べ始めたのだ。
そして何気なく遠くの建物を見ていると、なぜかはわからないが石造りの大きな建物が目に留まる。
理由はわからないが、ティアはなぜかそこが気になったのだ。




