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【書籍化&コミカライズ】もふもふの神様と旅に出ます。神殿には二度と戻りません!  作者: 四季 葉
第二章 聖女ではありません

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聖人が訪れる村 (3)

――生きてるってこんなに素晴らしいんだ。


ティアは頬を緩めると、夕飯を食べながら至福のひと時を味わっていた。


だって、とんでもない特訓から、奇跡的に生還できたのだ。ご飯の美味しさはいつも以上に素晴らしい!


その美味しさに感動し、思わず泣きそうになってしまうが・・そこはぐっと堪える。

さすがに、目の前に座っている村長さんと奥さんに、変な人と思われてしまう。それは避けたいものだ。


思い返せば・・今日は一体・・なんど死を覚悟したことだろうか。



命からがら村にたどり着き・・村の入口に着くとフィヌイ様が真っ先に出迎えてくれた。まるで、大好きな人の姿を見つけ全力で駆け寄ってくるワンちゃんのように可愛いのだ・・


思わず抱きしめて、スリスリしたくなるような衝動に駆られるが・・・そこは心を鬼にする。

そして修業の内容について問い詰めると、フィヌイ様はつぶらな瞳で・・


――だって、人間のことわざに「獅子は我が子を谷底に突き落とし、這いあがってきた我が子だけを育てる」ってあるでしょ。

僕はティアのことが大好きだから、あえて厳しい試練にしたんだよ。ティアにはこれから幸せになって、ずっと長生きしてほしいんだもの。


子犬のような愛らしい姿で、目を潤ませ尻尾を振って必死で訴えてくるのだ。


いや・・長生きどころか、いきなり私の人生終わるかと思ったんですけど・・と心の中で突っ込んではみるが、


ただ、悪気がないことだけはわかった・・。

そして、フィヌイ様なりに私のことを考えてくれている。

もうこれは仕方がない・・諦めよう。私が大人の対応をするしかないのだ。うだうだ言うだけ時間の無駄になってしまうし、


それに、神殿での日々に比べれば、圧倒的に充実していることは間違いないのだ・・開き直って、この瞬間を楽しみながら生きようと心に誓うことにした。




そして、今は・・ご飯が美味しいことに心から感謝。


まずはこの、茹でたてのほくほくのジャガイモ――

シンプルだが食が進み、不思議なことに気がつけばもう三個目に手が伸びていた。

皮が薄くパリパリなのに、中はほくほくでなんとも美味しい。塩をつけただけなのに甘みがありいくらでもいけるのだ。

話しによるとこのジャガイモ、冬を越したもので、ふつうの物に比べ甘みが格段に増しているようだ。

神殿にいるときに、主食としてよく食べていたが・・こんなにも、美味しく感じるものなのかと不思議に思ってしまう。


もっとも食べ応えがあったのは、ナスと挽肉のトマトソース、白いソースのせグラタン――

油で揚げたナスの中に挽肉が挟まれ、それをトマトのソースの中に閉じ込める。贅沢なことにその上にはミルクで溶いた白いソースが敷き詰められ、さらにその上には、チーズを散らしオーブンでじっくり焼かれていたのだ。

口の中にナスの柔らかさと挽肉の旨味がよく合い、トマトソースの相性が抜群だ。白いソースとチーズがそれを優しく包みこみ、生きていて良かったと実感できるおいしさだ。


最後に食後のデザートには冷たいチーズケーキ、苺とベリーソースのせが出てきた――

山で採れた木苺やマルベリーをじっくり煮詰め、冷たいチーズケーキの上にたっぷりとかけてある逸品だ。

疲れた身体にしみわたる、甘酸っぱく優しい甘さ、


生きていて本当に良かった!

死んだらこんな美味しいものにも出会えないし・・あぁ、なんて幸せなんだろう。

心の中でそう思いながら、いつものごとくティアはお腹いっぱい食事を楽しんでいたのだ。


そして、お腹もふくれたことであらためてフィヌイと交渉をし、

その結果、身体を休めるため明日の特訓はお休みということになり、ティアは安心して眠りにつくことができたのである。

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