運命の分かれ道
「そういえば、少しおかしかったような気が・・。黒い硝子のような物が割れるイメージが浮かんだんです。他の人を治療したときは、そんなことは一度もなかったのに・・」
――やっぱりね。ティア、それは呪いをかけた相手が使っていた魔力を宿した道具だよ。主に『魔道具』と呼ばれていて、きっと魔道具を破壊したときの映像がイメージとして浮かんだんだね。
「え・・。ウィル君、呪いをかけられていたの。あんなに小さいのに、ひどい・・」
――心配しなくて大丈夫。呪いは僕が食い破って食べちゃったから。
呪いは、あそこの侯爵家にかけられていたみたいだね・・ふざけたことをしてくれたものだよ。僕のいる国で、悪しき神の力を使った呪いを使ってくるとは、
術者には万倍にして返してやったから、これでしばらくは向こう側も手をだせないはずだよ。
そうだったんだ・・私の知らない所で色んな事が動いている。あまりにも多くのことに気づかされる。
もっと学んでいかなければいけない。知らずにフィヌイ様を抱きしめる腕に力がこもってしまい、
フィヌイは耳をぴんと立てると、驚いたようにティアの顔を覗き込む。
――ごめん。なんか怖がらせちゃったみたいだね。
「そんなことないですよ。私が無知だっただけで、教えてくれて有難うございます」
――怒ってないの・・ティアにも話せないこととか、まだたくさんあるのに・・これから先の旅でも、ごたごたに巻き込まれてしまうかもしれない。もしかしたら命の危険だってあるかもしれないんだよ。
ティアは思わずふきだすと、なにを今さらと言いたげな可笑しそうな顔で、
「フフフ・・そんなの出会ったときから、なんとなくわかっていましたよ。これは、平穏無事な人生は歩めなくなるような予感がしたんです」
――本当にいいの?今だったら、ティアの存在はまだ向こうにだってはっきりとは知られていない。
ここで僕とお別れする選択肢だってあるんだよ。金貨がこれだけあれば、他の土地で平穏に暮らすことだってできる。
「え・・?」
フィヌイがなぜそんなことを言い出したのか、ティアには理解できなかったのである。




