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道の途中で

 相変わらず人の気配のない道の真ん中でフィヌイ様と私は話をしていた。

 フィヌイ様は子狼の姿のまま、疲れたのかちょこんとお座りをする。そして尻尾を一振り。


 ――村の診療所の方はアルと僕の眷属もいることだし、診療所に患者さんが来ても大丈夫! そんなに慌てて帰らなくても平気じゃない。

 「でも、本当は遅くとも午前までには診療所に戻る予定が…。確かにアルは『癒しの御手』が使えるけど、任せっきりにするなんて。このままでは私の母親としての威厳が……」

 ――ティア凄い! 相変わらずだな~って思っていたけど、ちゃんと自覚があったんだね。感心感心、ずいぶんと成長したんだね~。

 「フィヌイ様~。それ褒めてないですよね…しくしく。やっぱり私の母親としての威厳のためにもフィヌイ様の癒しの力で、食べ過ぎで動けないこの状況を治療してくださいよ」

 ――ええ~! う~ん…しょうがないな。それじゃ今回だけだよ。


そう言いながらフィヌイ様はやっとその気になってくれたのか、治療のための傍に近づいてくれたが、急にはたっと立ち止まったのだ。そして子狼の耳をぴんと立て遠くの音を聞くようにぴくぴくと動かすと。


 ――あ、誰か来たみたい! でもアル達じゃなさそうだし、とりあえず普通の子犬のフリをするね。


 言うが早いか程なく村とは逆側の道から、カタコトと荷車の音が近づいてきたのだ。

 程なく牛さんが引いている農夫の荷車が通りかかる。


「モオ~~?」

「キャウキャウ!」

「おや、ティア先生のところのシロでねえか。こんなところでどうしたんだ。ん? ティア先生か!? 先に帰ったはずなのに…荷物背負ったままそんなところで寝てたら風邪ひくぞ!」

「その声はご近所のペレさん。ち…違います…。寝ていたんじゃなくて、食べ過ぎて動けないんです…」


 ちなみにフィヌイ様はこの辺境の村ではシロと呼ばれている。

 村の人たちには、迷い込んできたわんちゃんで診療所で飼うことになりまして名前はフィーって言うんですよ~と伝えてはあるんだけど…全身真っ白なためか、気がつけばなぜかシロと言う名前で定着していたのだ。


 そして荷車で通りかかったのは、私と同じ村のご近所に住む農家のペレさん。

 ペレさんと私は近くの町の収穫祭で顔を合わせている。どうやらペレさんは収穫祭に自分の畑で採れた野菜を売りに来ていたようだ。私は収穫祭でペレさんに挨拶をすませてから一足先に村へと戻る途中、食べ過ぎのため倒れ、気まずいことに同じく村に帰る途中のペレさんに見つかってしまったのだ。


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