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フィヌイのお宅訪問(11)

 「ねえ、ラース。今日はどうして、フィヌイ様が家に来ようとするのを邪魔したの?」


 私はゆっくりと問いかける。ラースはちょっと戸惑っていたが、ぽつりぽつりと話始めた。


 「不安だった…。俺たちの子供であるアルスの将来を考えると、フィヌイがもれなくついてくれば、厄介ごとに必ずといっていいほど巻き込まれるからな…!」

 「ふふふっ…まあ、その辺りは否定しないけどね」


 思わず私はプッとふきだす。


 「おい、笑いごとかよ…」

 「もちろん、私は真剣に話ているよ」


 私はあいつに近づき、至近距離でラースの顔を見つめると。


 「ねえ、私の目の色、何色に見える?」

 「薄い水色だ…」

 「そういうこと。それじゃ、アルスの目の色は?」

 「普通に見れば、ティアと同じ薄い水色だが…至近距離から見れば深い青色だ…」

 「そうだね。フィヌイ様の大きな加護は、聖女であった私からアルスへと移っている」

 「ああ、わかっている」


 つまりこの国の主神であるフィヌイ様は、聖女であった私の後継としてアルスを選んだのだ。この場合は聖女ではなく…『聖人様』になるのだろう。たぶん。


 私の本来の目の色は榛色だ。しかし、元の色には戻らず水色のまま。それはつまり、フィヌイ様の加護がまだあるということ。

 けどアルスの目の色は普通にみれば水色だが、かなりの至近距離から見れば奇麗な青い瞳だ。

 青い瞳は――この国では主神フィヌイ様の加護を受けた代弁者の証だ。普通に見て青い瞳の人間がその辺をうろうろしていたら、神の代弁者が現われたと大騒ぎになってしまう。普通に見てアルスの水色の瞳は、フィヌイ様なりの配慮があるのだろう。


 「ねえ、ラース。私、自分なりに考えてみたんだけど…これから先の未来、アルスにとって山あり谷ありの大変な人生なのかもしれない。けど、私たちは僅かでもアルスの助けになれることもあるんじゃないかな。私はこれから先、アルスがどんな試練に見舞われても乗り越えていけるように、その術を出来るだけ教えようと思う。もちろん、アルスは心の強い子だからどんな困難でも乗り越えられるって信じているけどね!」

「そういうところは確かにお前に似ているな。俺としては、母親の変な性格は似ていなくってほっとしたがな…。まあ、フィヌイが傍にいるってことはまず、平穏な人生は送れないだろうことはわかってはいたさ。だから俺も出来る限り、アルスのこれから先の人生どんな困難に見舞われても乗り越えられるよう、その手助けになるように俺にしかできないことを教えるつもりだ」


 ラースの目には迷いが消え、強い決意の色が宿っていた。

 私はあいつの傍らにそっと寄り添う。


 外ではアルスたちが楽しそうに遊んでいる姿を見つめながら、私達はこの子の未来を温かく見守っていこうと思ったのだ。


~・おわり~・~


フィヌイのお宅訪問、おわりました!

次回は、いよいよ本編第二部?が始まります。

5月上旬ごろ更新を予定しているので、よろしければまたご覧ください!

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