羽毛もふもふ日記(18)
僕とフィヌイ様は、ご主人とティアお姉ちゃんのところに急いで戻ると休憩時間は終わりとなり、僕たちはそのまま旅を続ける。
その日の夜――僕はご主人にフィヌイ様と誰もいない所でいろんな話をしたんだよって伝えたら、ご主人はとても驚いていた。
顔色を変えると、僕のもふもふの羽毛を頭から尻尾の先まで怪我でもしてるんじゃないかと慎重に触れながら。
「…大丈夫かノア。どこか噛まれたり、追い回されたりしたんじゃないのか?」
心配そうに聞いてくる。
…ん? そう言えばちゃんと話をする前、フィヌイ様に追い回されたり尻尾の先を軽く踏まれたような気はするけど、それは僕が勘違いしていただけだし…
それにしてもフィヌイ様…。いまだにご主人からも、僕のこと食べようと狙っているって勘違いされているみたい。
僕は誤解がないようにご主人にちゃんと説明したよ。フィヌイ様は北の大陸の大森林まで、僕が望めば送り届けてくれるとまで言ってくれたこと。僕はその申し出を、今は受けられないと断ったことを伝えたんだ。
ご主人は静かに僕の話を聞いてくれた。そして、話が終わるとぽつりと呟く。
「あいつには、感謝しないといけないな。俺が生きている間…どうやってノアを故郷に送り届けようかとずっと考えていた。だがあいつは、フィヌイの奴は俺と同じようにノアのことを気にかけてくれていたんだな。霊獣と契約を結ぶということは、俺が死ねばノアお前も死んでしまうからな。それがずっと気になっていた」
――僕はそれでも構わなかったよ。ご主人のこと大好きだしね。
「そんなわけいくか…。お前には幸せになってもらわないとな」
苦笑を浮かべながら大きな手で、もふもふの僕の頭を撫でてくれる。
僕はなんだか、くすぐったい気分になる。どうやら僕もご主人も考えていることは同じみたいだ。
そしてフィヌイ様は、あれからご主人も交えた話し合いで、ご主人の寿命がつきたらすぐに僕に加護を授け、北の神域の大森林まで送ると約束してくれたのだ。
それから気がつけば十年以上の月日が過ぎていた――
ご主人はやっぱりというべきかティアお姉ちゃんと番となり、その間には男の子が生まれていた。
黒髪で顔だちがご主人によく似た、優しくって利発様な子だ。
僕とフィヌイ様は、たまに子育てを手伝いながらも賑やかな家族を温かく見守っていたのだ。
~・~ おわり ~・~
長くなってしまいましたがノア編やっと終わりました!
書いていて楽しかったですね。後半はフィヌイとのやり取りが多かったような気もします。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次は、新章本編の少し前の話から書きたいと思います。よろしければまたご覧ください。