羽毛もふもふ日記(17)
神様だってわかってはいるんだけど…フィヌイ様の可愛い子犬の仕草に僕は困っていた。
――え~と、フィヌイ様。それは、ちょっと難しいです。
――えー! ノアもなの、つまんないよ~!
フィヌイ様は愛らしい子狼の姿で、小さく頬を膨らまし前足をふみふみ地団太を踏んでいた。
僕は完全に困り果てていた。
いや、だって見た目は白い子犬でも中身は偉い神様だし…。
神様に向かってそんな大それた口を聞いていたと…もし大森林にいる長老が知ったら、凄く怒られそうな気がするのだ。でも、そのことを話さないとフィヌイ様に誤解されそうだと気づき、僕は慌てて説明する。
――あの…フィヌイ様のことを知っている長老がいるんですが、神様に向かって無礼にもほどがある! ってきっと帰ったら怒られると思います。
――え? 僕のこと知っているの。それって誰のこと?
フィヌイ様は興味津々で聞いてくる。
僕は長老のことをフィヌイ様に話たのだ。千年前の大戦のときにフィヌイ様が戦う姿を見ていたということも含めて。
――ああ、あの時の若い神獣だ。初陣だったみたいで、とても怯えて腰を抜かしていたから心配していたけど、無事に大戦を生き抜いたんだね。よかった、よかった! あの時は僕も大暴れして戦っていたから驚いたんだね。ハハハ。
フィヌイ様は、僕のカッコイイ雄姿を後世に語り継いでくれていたんだねって言いながら、尻尾をふりふりとてもご機嫌だった。
…あれ? 僕はそこではたっと気づいたのだ。
あの威厳ある長老が、昔はかなりの怖がりだったことに。なんか長老の聞いちゃいけない過去を知ってしまったようで、ちょっと複雑だな。
けどフィヌイ様は僕の心の内を知ってか知らずか、ゆっくりと僕に語りかける。
――まあ、いろんな側面が僕にはあるってこと! それを全部ひっくるめて僕という存在なんだよ。
――でも…フィヌイ様のこと、僕は親しみが持てるし、とても優しいと思います!
――そう、そう言ってくれると嬉しいな。
フィヌイ様は明るく笑っていた。
そこでちょうど、僕たちを呼ぶ声が聞こえたのだ。思わずフィヌイ様と僕は顔を見合わせる。どうやら、ご主人やティアお姉ちゃんが僕たちを探しているみたい。気がつけばずいぶんと話し込んでいたようだ。
僕とフィヌイ様は急いで二人の声がする方向へむかったのだ。