羽毛もふもふ日記(14)
パサッパサパサッ――
落ち葉を蹴って近寄ってくる、小動物の軽い足取りが聞こえる。
僕は温かい落ち葉の上でぬくぬくとお昼寝をしていたけど、気配を察してちょっと寝ぼけていた目を薄っすらと開けてみると、目の前にいたのは――!
「――!?」
――やあ、ノア!
視界いっぱいに子狼姿のフィヌイ様の顔があった。もふもふの白い狼の耳がピクピク動き、無邪気な笑顔を振りまいている。
けど、近い…近すぎるよ。
またしても僕は動きを止め固まってしまった。
僕は霊獣だけど…鳥の霊獣だ。そして、フィヌイ様は神様とはいえ今は子狼の姿。
なんか本能的に――危険が迫っているんじゃないかって思ってしまうんだけど、気のせいだよね。
目の前でフィヌイ様が何か話しているけど、まだ寝ぼけているせいかまったく頭に入らない。
――あれ? もしかして驚かせちゃった。実はちょっと誰もいない所で…
その瞬間、口を開けたフィヌイ様の犬歯がきらりと光る。
「ギャアアア――!!」
僕は悲鳴を上げると羽ばたき一目散に逃げだしたのだ。
少し前のお昼ご飯のとき――フィヌイ様、たしか…物足りないからまだ何か食べたいよ~とか言っていたし僕のこと食べようとしているのかもしれない。
僕は安全圏内まで低空飛行で全力で逃げることにした。
そして、ちらりと後ろを振り返れば、
――なになに、追いかけっこしてくれるの? よーし、僕も負けないからね! 全力で走るよ~まてまて!
なんか嬉しそうな顔で追いかけてくるんだけど…
僕は、さらに速度を上げ必死で逃げた。しばらく飛んでいると途中、ティアお姉ちゃんの姿が見えてきた。
よし、安全圏内だ! と思ったがティアお姉ちゃんはあっという間に後ろに通り過ぎていく…。
あ…スピードを出し過ぎて僕はティアお姉ちゃんを追い越してしまったのだ。
ティアはフィヌイを探し、あたりをきょろきょろと見回していた。すると急に突風が吹いたのだ。
その瞬間――
決死の形相で飛んでいる霊獣のノアと、そのすぐ後ろから楽しそうに走っているフィヌイの姿が見えたような気がした…。
「…ん?」
しかしティアはすぐに気のせいだと思い、再びフィヌイを探すことにする。
全力で飛んでいるのに、全然フィヌイ様を引き離した気がしない。そう思いながら飛んでいると、
突然、むにゅっと尾羽を踏まれたのだ。羽を一生懸命動かしているのに全然前に進めていないよ~。
じたばたと体を捻り後ろを振り返れば、案の定フィヌイ様が前足の小さな肉球で僕の尾羽を軽く踏んでいたのだ。
――やった―! 追いかけっこは僕の勝ちだね。もう、ノアったら少し落ち着きなよ。今日はノアと誰もいない所で話をしようと思ったんだ。
「え?」
僕はじたばたを羽を動かすのを止める。するとフィヌイ様は、尾羽を踏んでいた肉球を静かにどけてくれたのだ。