羽毛もふもふ日記(13)
僕が戻ってくる間に、いつの間にかご主人は聖女様一行に加わっていた。
聖女様一行といっても、聖女のティアお姉ちゃんに、神様であるフィヌイ様。ご主人とそして僕が新たに加わっただけだが。
どうやらご主人は、聖女様の護衛を引き受けたことで主神フィヌイ様の加護を授かったらしい。
けどフィヌイ様って確か……千年前の大戦を終結に導いた偉い神様だよね。北の大陸の大森林に住んでいたときにフィヌイ様に直接会ったことのある長老が、こんな話をしてくれた。
フィヌイ様は大地を司り、大地の豊穣や戦いの神様として人間たちの間では知られている。
善なる神様だけど、魔物や悪い霊獣なんかをバリバリ食べたり、ちょっと本気になれば、大地を裂き地殻変動なんかも起こしたりできるとても強い神様だって。畏れ多いから、もし出会うことがあったら絶対に怒らせちゃいないって言ってた……。
でも…ご主人たらフィヌイ様に向かって凄い口を聞いている。
隣で聞いていた僕は口をあんぐり開け思わず固まっていた。魂が凍るような爆弾発言をフィヌイ様に向かって連発していたのだ。
ご主人~~!! これじゃフィヌイ様、怒っちゃうよ!! 天罰とか落とされたらどうするの!! ご主人に何かあったら僕…泣いちゃうよ!!
けど、僕の必死の叫びはすでに遅く……。
フィヌイ様は子狼の姿だけど、気がつけば目を逆三角形にしてかなり怒っていた。
そして次の瞬間、どこからともなく暗雲が立ちこめ、稲光と共に雷がご主人の真上に落ちていた。
ああ…だから言ったのに…うっ…う……ひくひく、グス…グス。
ご主人は昔から、なぜか神様の存在に関しては否定的なところはあったけど。
いつもなら柔軟な思考で物事を判断するのに、フィヌイ様に関してはなぜかムキになってしまうようだ。
僕が泣きそうになっていると、ご主人の傍に急いで駆けつけティアお姉ちゃんはご主人を聖女様の奇跡で治療してくれたのだ。
そのあともティアお姉ちゃんは、僕と一緒に頭を下げてご主人のことでフィヌイ様に謝ってくれたし、フィヌイ様が美味しそう~って僕に向かって言った時も一生懸命庇ってくれた。
なんて…心の優しい良い子なんだ。ティアお姉ちゃん大好き!!
フィヌイ様は畏れ多くて近寄りがたいけど、ティアお姉ちゃんがいてくれて本当に良かった! ご主人もティアお姉ちゃんと一緒だととても楽しそうだし良かった。
僕たちはその後も、いろんなことがあったけど一緒に旅を続けていた。
けどそんなある日――僕は休憩時間、みんなと離れて落ち葉の上でお昼寝をしていたら、そこへ突然フィヌイ様が子狼の姿でやってきたのだ。