羽毛もふもふ日記(11)
パタパタパタ――
風に運んでもらい上昇気流にのって、商業都市ディルの街の上空を僕はゆっくりと旋回しながら風を切って飛んでいた。
今日は朝から青空が見えているし、いい天気になりそうだ。
晴れて天気も良さそうだしのんびりと飛んでいたいけど、そういうわけにはいかない。なぜなら僕は今、お仕事の最中なのだ。
交易の中心地である商業都市ディル。この街のどこかにいるリューゲル王国の聖女様を探さなければいけないのだ。
ご主人は地上から徒歩で、鳥の霊獣である僕は上空から二手に分かれて聖女様の気配を探している。
けど…ご主人には他にも、ディルの街でなんらかの密偵としての仕事があるみたい。だから、聖女様探しは僕が頑張らなければいけないのだ!
ちなみに僕とご主人は神力を察知できる。けど、僕の考えでは主神フィヌイ様は完全に気配を隠しているはずだから僕たちではわからない。
でも聖女様ならわかるかもしれない。聖女様はこの国でただ一人フィヌイ様の加護を受けている。つまり、フィヌイ様の神力を僅かでもその身にまとっているんだ。
僕は上空を旋回しながら、精神を集中させ気配を探っていく。
しばらくそうやってディルの街の上空を飛んでいると、魔力が強い人間を見つけることができた。
聖女様かどうかはわからないけど…ご主人と同じくらい。いや、もしかしたらご主人より潜在的な魔力が強いかもしれない。
風に乗って飛ぶのを止めると高度を下げ、僕は街の中にある公園の大きな木の枝に静かに止まる。
僕の姿はふつうの人間には見えない。それに加え、魔力がある人間にも姿や気配がわからないようにするため僕は姿を消す風魔法を使っている。
これで僕の姿はご主人を除き、魔力がある人間にだって見えないはずだ。
僕は緑の生い茂る葉の隙間から、慎重にその人物を確認する。
――すると
……ん? 焦げ茶色の髪の女の子が、大きな口を開けサンドイッチを美味しそうに食べているところだった。
そのすぐ近くには、もふもふの白いぬいぐるみのような子犬が、女の子からサンドイッチを貰ってこれまた美味しそうに食べている。
あれ……? もしかして間違えたかな。あの十五歳ぐらいの女の子から、強い魔力の気配がするんだけど……神力の気配も微弱ながら感じるような。
僕の勘違い?? 性格は良さそうだけど、どこにでもいるような普通の女の子に見えるんだけどな。
う~ん。う~ん。
僕は枝に止まり、一生懸命唸りながら考えていると、ふと視線を感じたのだ。
顔を上げれば、もふもふの白い子犬が青い瞳でこちらをじい―と見つめていたのだ。