羽毛もふもふ日記(8)
あれから数日が経ち――
最初はよくわからず混乱していた僕も、周りの様子が少しずつ見えてきた。
まず、命の灯が消えそうになっていた僕を助け、ここに連れてきてくれたラースという名の黒髪の男の子。よくよく思い出してみると知っている子だった。
前の凄い我儘な契約主が…気に入らない奴がいるから風魔法を使って攻撃しろ! って命令したときに、攻撃対象として前を歩いていたあの男の子だったんだ。
僕が前の契約主に物凄く反抗して攻撃を拒んだため、ブチ切れした前の契約主にポイって捨てられていたところを、あの男の子が僕を助けここに連れてきてくれたんだって。そう、あのお爺さんが僕に教えてくれたんだ。
――僕は、このラースって名前の男の子を『ご主人』って呼ぶことにした。
でも今の僕は、前の契約主によって供給されていた魔力が急に絶たれたことにより、とても不安定な存在になっていた。
もとは強い魔力が満ちている神域に住んでいたから、魔力の薄い人間が住む地域は霊獣としての僕の体質に合っていないらしい。だから外の世界に出た途端に、存在が消えてしまう可能性もあるんだって。
お爺さんはそう説明してくれた。とても丁寧に説明してくれたから、僕とご主人はその話をふむふむと聞いて納得することができたんだ。そして僕は今、あのお爺さんの部屋にいる。
お爺さんの部屋の片隅には、緑色の光で作られた球体――つまり魔道具があり、その中はご主人の魔力で満たされていた。その魔道具はお爺さんが作ったもので僕は現在、傷を癒しつつ、存在が完全に安定するまでその中で生活をすることになっている。
ご主人は朝になると魔法学院ってところに通い、夕方になるとこの部屋に帰ってくる。
僕はいつも、ご主人が帰ってくるのがとても楽しみで心待ちにしていた。ご主人は、師匠であるお爺さんに対して乱暴な言葉づかいをすることもあるけれど、心根はとても優しいって知っているから――
僕は、ご主人に出会えて本当に良かったって心から思えたんだ。