羽毛もふもふ日記 (3)
あれから、どれくらい時間が経ったのかわからない。
そしてここがどこなのかも…。
気がつけば僕は人間たちが住む国に連れてこられていた。
霊獣は、神様に仕える神獣や幻獣に比べ情が深く、人間の気持ちに寄り添うことができる。そして対等な関係を築くことができると昔から言われているんだ。
実際、昔は地上に魔力が満ちていたから良い霊獣と人間は助け合い仲良く暮らしていた。
けど地上の魔力は薄くなり、霊獣は神域の外では暮らせなくなってしまった。なぜなら、魔力が薄い場所では霊獣は生きてはいけないから。
でも、人間と契約を結ぶことができれば外の世界でも、その人間の魔力を貰って生きていける。対等な関係なら困ることはないけど、そんなことはすごく稀らしい。
ただ『契約』といったら、人間に一方的に使役されるものが圧倒的に多いんだ…
悪い予感は的中するもので…僕は悪い人間に捕まり霊獣を契約で縛りつけ、契約主には逆らうことの出来ない術をかけられてしまった。
つまり、主の命令には逆らえない。無理やり逆らえば命を落としてしまう。一方的に使役されるだけの術。
これでは、もう故郷には帰れない。みんながいる大森林には帰れないんだ。
そう思うと悲しくって悲しくって仕方がなかった。
あの時きらきらの光を見るため、神域をでなければこんなことにはならなかったのに。何度後悔しても遅く、時間はもとには戻らない。
僕を契約で縛りつけたのは、人間の世界では偉い地位にいるようで、貴族って呼ばれていた。
前に僕を捕まえた人間が言っていた、ご当主様っていう人の息子なんだって。
まだ子供なのに、なんか無駄に偉そうで、凄い我儘なんだけど…。
それに癇癪もちで、ちょっとでも自分の思い通りにいかないと、物を投げつけて怒鳴り散らすんだ。
例えばこの間なんか…鳥の霊獣なんだから飛んでみろ! と言われて、いつもみたいにパタパタ飛んでみたら。
「立ち姿は様になっているのに、見かけだけかよ!! なんだこの不細工な飛び方は…違う――!! その間抜けな飛び方をやめろ!! もっと優雅に美しく飛べないのか――! これじゃ他の貴族に自慢するどころか笑われるだろうが!!」
そう言いながら、部屋の物を手当たり次第に投げつけて大暴れするんだ……しくしくしく
とにかく怒りだしたら大変なんだ。
でもそんなある日、その主はついにブチキレてしまったんだ。