羽毛もふもふ日記 (1)
本編より数年前のお話から始まります。ノア視点でしょうか。
むかしむかし神様は、精霊や人間たちと一緒に地上で平和に暮していました。
その頃は、まだ地上には魔力が満ちていて、神様に仕える神獣や聖獣、そして霊獣や魔物なんかもいたんだって。
僕の故郷は、遥か北の大陸の端にある神域と呼ばれる大森林。
この地上で唯一、魔力が満ちているところなんだ。
千年以上前までは、今よりも強い魔力が満ちていて、僕たちの仲間はこの地上のいたるところで暮していた。
けど、大きな戦いが始まった。地上が荒れ果ててやがて戦が終わると、神様の多くは地上を離れ天上へと帰ってしまった。
もちろん神様と共に天上へついていく多くの仲間たちもいた。でも、それでもこの地を恋しがり、僅かに地上に残ることを望んだ者達もいた。
自然界から生まれた、地・水・風・火の四大元素を源とするそれぞれの属性の精霊や妖精、聖獣や霊獣、幻獣なんかの僅かな者たち。みんなは、天上に帰る前に神様が最後に創ってくれた北の大陸の端にある神域と呼ばれる大森林の中でひっそりと暮らすことにした。
大戦によって地上は荒廃し、地上に満ちていた魔力も薄くなり、僕たちが住める環境ではなくなったから。
それに今まで一緒に共存し平和に暮らしていた人間たちが争い始め、欲深くなってしまったんだ。
人間はより大きな力を求め、争うために魔力を使うことを覚えた。それは、自然界の四大元素を使った魔法だけに留まらず、より強い魔力を操ることの出来る霊獣なんかを契約で縛り使役する術も編みだしたんだ。
神様はそんな悪い人間たちから僕たちを守るため、北の大陸に神域と呼ばれる大森林を創ってくれた。この中には、人間は絶対に入ることができないから。
なのに僕はあの日、大森林の外で輝く不思議な光を見つけ、どうしてもそれが気になって興味本位から神域の外に出てしまった。
神域の外には絶対に出ちゃいけないって、みんなから言われていたのに…森にはすぐに戻ればいいと、安易に考えていた。
今考えれば、それがご主人と出会うことになる全ての始まりだったんだ。