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【書籍化&コミカライズ】もふもふの神様と旅に出ます。神殿には二度と戻りません!  作者: 四季 葉
第二章 聖女ではありません

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確信犯の策略

まだ六、七歳ぐらいだろうか・・小さな体で必死に目をつぶり、頭の痛みに耐えている。


「お母様・・近くに誰か来ているの?」


男の子は目を薄っすら開けると、手を広げ虚空を彷徨わせていた。その時、目の焦点が合っていないことにティアは気づいたのだ。


「今、治療ができる人が近くにいるの。すぐに頭が痛いのは良くなるからね」

「ほんと、聖女様が治療してくれるの」

「ええ・・そうよ・・」


母親は歯切れ悪かった。どうやらこの子には・・神殿で言われた内容を、本当のことを告げてはいないようだ。


「お子さんは、目が見えていないんですね」

「はい。数か月前に高熱が続き、熱がひいたと思ったら目が見えなくなっていました。

それだけではなく、頭の痛みもたまに訴えるようになり、その周期もだんだんと短くなり・・・ここ最近では毎日のように痛みを訴えるようになったんです。

薬師や神官様・・あらゆる方法を試しましたがどれも効果がなく、そこで聖女様にすがることにしたのですが、この有様で・・私、どうしたらいいのかわからなくなってしまって・・」

悲しむ母親をティアはそっと抱きしめる。


考えてみればアリア様は資格を剥奪され、聖女の奇跡は使えない。それで無理やり天赦祭を執り行えばこうなるはずだ。ちょっと考えれば、わかっていたことなのに・・


もし私が神殿にいれば、こんなことにはならなかった。自責の念に苛まれていると・・フィヌイ様が子狼の姿でぴったと足元に寄り添ってくれる。

まるで、大丈夫だよと言ってくれているみたいに・・もふもふの温もりがとても心地いい。


ティアは深呼吸をすると気持ちを切り替え、

右手を仰向けで寝かされている男の子の目の上にそっとのせたのだ。


フィヌイ様の神力が、自分に流れ込んでくるのを感じた。そのまま神力を男の子の中へと運び、悪いところが治っていくイメージを描いていく。

右手は、ほのかに光り輝き、


パリッン――


突然、黒い硝子が割れるイメージが浮かんだかと思うとすぐに消えたのだ。


男の子の顔色はみるみる良くなると、静かに目を開け、


「あれ・・目の前が明るくなったみたい。それに頭も痛くない・・」


男の子は上半身だけ起き上がると、辺りをきょろきょろと見回し、

そして、母親の姿を見つけると抱きついたのだ。


「お母様・・!僕、お母様の姿がはっきりと見えるんだ!」


母親は信じられない顔をすると、すぐに自分の子供を強く抱きしめる。

感動の場面だ。ティアは、涙ぐみながらその光景を静かに見つめていると、


ふいに男の子はきょろきょろを周りを見渡すと、ティアの姿を見つけこう言ったのだ。


「ありがとう。聖女のお姉ちゃん・・!」


その瞬間、ティアは固まる。

感動の場面のはずが、冷たい汗が頬を流れ、

とたんに周りの人たちの視線もティアに集まり、その顔には感嘆の表情と、神聖な存在を見る眼差し、まさに聖女様の奇跡だ!と無言で言っているのが伝わってくる。


助けを求めるようにフィヌイ様を見れば、青い目をうるうる潤ませ、


――やったね!これで、ティアも立派な聖女だね。


と無責任なことを言っていたのだ。


 その瞬間、絶体絶命のピンチだとティアは直感したのだ。

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