聖女の肖像画 ~ラース編~(3)
今、人払いはしている。
部屋の中にいるのはアイネと自分の二人のみ。この話をしても問題はないだろうとラースは判断すると、
「ええ、あいつは旅をしていた時のまま。相変わらず元気でしたよ。薬師見習いとして頑張っているようでしたし、時間を作ってまた、ティアの様子を見に行くつもりです」
久しぶりに逢ったにもかかわらず、ティアの奴……始めは柱の影からジト目でこちらを見ながら思いっきり威嚇して、相変わらず元聖女とはとても思えない、変な奴だったがな…
と、ここは余計なことなので目の前の神官長には言わないでおくか。
「ふふふ、ラースさんの話からティアの様子が目に浮かぶようですわ。あの子、元気にやっているようね」
「……。それで、私を呼び出した理由を伺ってもよろしいでしょうか?」
楽しそうに目を細めしばらくの間アイネは笑っていたが、ラースの言葉に我に返ると、なにかを思い出したかのように軽く手を叩く。
「そうそう、本題を忘れていましたわ。国王陛下からの要望で、この神殿の『白銀の間』に、また新たに飾ることになった聖女の肖像画についてなんですが……やはりラースさんの意見も聞きたいと思いまして」
ラースは、そこまで聞くと自分が呼ばれた理由を察したのだ。
そういえば…歴代の聖女の肖像画が、この神殿の白銀の間に収められているのをラースは思い出していた。
すっかり忘れていたが、慣例では新しい聖女がフィヌイにより選ばれ神殿に入ると、宮廷画家が聖女の肖像画を描くことになっていたのだ。