フィヌイの散歩(15)
フィヌイは何かを思い出したかのように、ぽかーんとした顔でティアを見つめると、
――あ! そういえば、昔…この湖に僕が直接、術を施したことすっかりと忘れてた!
「フィヌイ様、この湖に神様の力を使ったんですか?もぐもぐ…」
ティアは、食べる手は止めずに質問を続ける。
――うん! ここへ前来たとき…フェアル湖で獲れるお魚がとても美味しかったから、つい感動のあまり心の綺麗な人間が祈りを捧げると、願いが叶う術をかけたんだ。その時は、まだ神力に制限がかけられていなかったからね。
「ん? もしかしてフィヌイ様が急に海のお魚が食べたくなったのは…ひょっとすると」
――う~ん。もしかしたらマツリカが湖を通し僕に祈りを捧げたから、術の影響で僕がここに引き寄せられたのかもしれない。マツリカの願いを叶えるためにね。
「なるほど…まあ、それもいいんじゃないですか」
ティアは優しく微笑んでいた。ラースも今の話で何かを察したのか、苦笑いを浮かべていたのを視界の端にちらっと捉えながらも、素知らぬ顔でフィヌイは水をぺちぺち飲むことにする。
まあ、でもたまにはこんな寄り道もいいよね。
久しぶりに素敵な出会いもあったし、優しい気持ちにもなれた。
これから再会することになる元聖女のアリアも、きっと自分を取り戻してくれるような気がする。
ティアは優しくって心の強い子だから……これから先、どんな辛い困難が待っていようとも乗り越えられるとフィヌイは強く信じていたのだ。
そして――あれからマツリカにも幸運が訪れ、今は両親と幸せに暮らしていると、風の噂で聞くことになる。
~・ おわり ~・~
フィヌイ編、おわりです。ここまで読んで頂きありがとうございました!
え……予定では、秋ごろから本編の続きを書くつもりでしたが、
思った以上に仕事が忙しくなり、まだ準備が整わず本編を思うように書けていません。スミマセン(>_<)
しばらくは番外編をちまちまと書いていく予定です。準備が整ったら本編も投稿しますので、よろしくお願いします。
次回はラースの話に入ります。