修道女のローブ
そしてティアも、慌てて貴婦人に修道女としての礼を返したのだ。
心の中では、修道女がいる孤児院で育っただけで本物の修道女じゃないんだけど・・騙しているみたいで、なんか後ろめたい気持ちになってしまう。
しかしフィヌイ様の言い分では、修道女や神官よりも治癒魔法が優れているのは聖女だし、大した違いはないよ。似たようなものだからね・・とお気楽なことを言っていた。
神様が良いと言っているのだし大丈夫なのだろう。それでもなんか、疑問は残ってしまうが・・とりあえず今は深く考えないことにする。
「お見受けしたところ、そのお召し物は治療魔法を心得ている修道女様のようですが・・」
「え!・・はい、そうです」
すっとんきょうな声を出してしまったが、ティアは慌てて誤魔化し、
この格好って・・?この修道女のローブは、治癒魔法が使える修道女の格好だったのか・・とティアが内心驚いていると、フィヌイが語りかけてくる。
――あれ・・ティア知らなかったの?近くから見るとわかるけど、ローブのこの模様。
銀色の刺繍は治癒魔法が使える証で、こっちの緑の刺繍は薬草を扱って治療を行うことができる証なんだよ。
それなら、なんでもっと早く言ってくれなったのかとフィヌイを睨みつけるが、
――あれ、ほんとに・・それじゃ言うのを、忘れてたんだ。アハハハ・・ごめんね。
可愛い子犬のフリをして、尻尾をふりふり振っている。
完全に確信犯だ――!
「あの・・修道女様?」
「す、すみません・・ちょっと、ぼんやりしていたようです」
フィヌイ様への追及は後だ。今はこの人との会話に集中しないと、
「不躾ですがお願いがございます。私の息子が頭の痛みを訴えておりまして、領地につくまでの間でも、その痛みを緩和させてほしいのです」
「緩和ですか・・治療ではなく?」
「はい。・・実は天赦祭で聖女様に治癒していただく予定だったのですが、私共が来た方角がよくないということで急きょ治療を断られてしまったのです。
次の冬至にまた来るようにと告げられ、応急処置として神官様が代わりに治療を行ってくれたのですが・・」
「また、頭痛が再発したんですね」
「それと・・馬車を引いていた馬も急に動かなくなってしまい、困り果てたところに貴女様が来られたのです」
「わかりました。私にできることがあれば最善を尽くします」
「ありがとうございます」
貴族にも関わらず母親は、深々と頭を下げたのだ。
ティアは、チラッと足元のフィヌイを視線を送ると子犬のフリをしている神様は頷いている。
治癒の奇跡を使ってもいいという合図だ。
その場にティアはしゃがみこむと、芝生に敷いてある毛布に寝かされている男の子の様子を確認したのだ。




