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フィヌイの散歩(8)


 翌日――


 「ふえ~ん~。 フィーどこに行っちゃたの…早く帰ってきて」


 一日待ってはみたものの、結局フィヌイ様は宿には戻ってはこなかった。

 さすがにもう限界。我慢はできないとばかりにラースやノアを引き連れて、私は半ば強引に宿を飛び出し、フィヌイ様を探しに街の中へと出かけたのだ。


 昨日は心配のあまり、夕飯なんか一人前しか喉を通らなかった。いつもなら五人前は軽く食べられるのに…というようなことをラースに言ってみたら、


 あいつは、とても冷めた口調で、


 「……。一人前食べられれば、ふつうに考えても十分だろが。大体いつも食いすぎなんだよ…!」


 とか言ってきたのだ。

 なんて、乙女心のわからない冷たい奴なんだ!

 あいつに相談したのが間違いだったと落ち込んでいると、鳥の霊獣ノアが心配そうに私の傍に寄ってきてくれたのだ。

 私は思わず、反射的にノアを両手でがしっと抱きしめると、頬擦りをしもふもふを堪能する。フィヌイ様とはまた違い、柔らかい鳥の羽毛が私の心を癒してくれる。

 念のために言っておくが、もちろん一番はフィヌイ様だよ! と心の中で呟きながら…


 「あぁぁ…! お前はこんなにこねくり回して、賢いノアがあの犬っころのような間抜け顔になったらどうするんだよ! そうなったらお前のせいだからな!」

「何言ってるのよ! フィーは可愛い私のわんちゃんよ。間抜け顔なんかじゃないわ!」


 さすがにこんな街中で、大きな声でフィヌイ様とは言えずお茶を濁しつつ、ラースとはこんな感じで引き続きフィヌイ様の捜索を続けたのだ。


 「でも…。本当にこの辺りにフィーはいるのよね」

 「ああ、間違いない。俺とノアの魔力探知。まあ今回は犬っころの神力だが――正確に場所を特定する探知能力を今回は二重で使っているからな。間違いなく、あの犬っころはこの近くにいる」

 「ピィー、ピィー、ピィー」


 羽をパタパタ動かしながら、ノアもラースの言葉に同意しているようだ。

 もう少しでフィヌイ様に会えるんだ。愛らしい見た目とは違い、すごく強いのはわかっているけど、やっぱり心配なんだよね。

 でも、もう少しで会えると思えば、知らずに心の中がとても明るくなってくる。



 そして――



 ――あ、ティアだ!!


 下町を歩いていると、突然フィヌイ様の声が直接、頭に聞こえてきたのだ。

 その途端、私の腕の中にいたノアはぱっと消え、いつの間にかラースの肩の上に止まっている。


 正面を見れば、フィヌイ様は子狼の姿で小さな女の子に抱っこされてこちらを見つめていたのだ。

 そして私の姿を見つけると、女の子の腕からするりと抜け、私めがけて嬉しそうに走って駆け寄ってきたのである。


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