謎のもふもふ ~ティア編~(12)
程なくしてラースはお茶を一口飲むと、ぽつりと呟いたのだ。
「まあ、ティアに話したところで問題はなさそうだな。 特に、口止めをされているわけでもなし、それに――リベル婆さんには俺がここに来ていること、どうやら伝わっているようだ」
「え、どういうこと?」
「お前なあ…すぐに気づいてもいいはずなのに、相変わらず規格外の強い魔力があるくせに、鈍すぎるだろ……」
きょとんとしている私に対し、ラースは呆れたようにため息をつく。
その態度に私はムっとすると、
「いきなりなによ。説明してくれてもいいじゃない!」
「わかった、わかった。それじゃ…あそこに座っている黒猫を見てみろ。なにか気付くはずだ」
ティアは、部屋の隅でちょこんとお座りをしてこちらを見ている、黒猫のベルを穴が開くほどじーと見つめ自信ありげに一言。
「子狼の姿のフィヌイ様と同じで、愛らしいもふもふ!! もちろんフィヌイ様が一番だけど……それに匹敵するぐらいベルもかわいい!」
その瞬間、ゴンという鈍い音とともにラースはテーブルに突っ伏し頭をぶつけたのだ。
わなわなと震えながら彼は元の姿勢に戻ると、
「馬鹿かてめえは!! 俺は気配を探ってみろっていったんだよ!」
「ええ! だって可愛いから、つい本当のことを…わかったわよ。まったく、うるさいんだから……」
口をとがらせてブツブツ文句を言いながらも私は、今度は魔力を使い、ベルの気配を探ることに集中する。
――すると、
おや? 確かに言われてみると…普通の猫とベルとはまったく違う。私はそのことに、やっと気づいたのだ。
「フィヌイ様ほどじゃないけど、ラースの霊獣ノアと同じぐらい。いや、それ以上に…ベルも強い魔力を持っている??」
「やっと気づいたか。そうだ、この黒猫はリベル婆さんの霊獣だ。今はふつうの猫のフリをしているがな」
ラースの言葉に私は目を丸くする。
愛らしい黒猫もふもふに気を取られて、気づかなかったなんて……やっぱり、もふもふの力って偉大ですごいんだと、かなりズレた視点から私は感心していたのだ。