お茶でも飲みながら ~ティア編~(11)
「ひ、久しぶり…元気だった」
「まあまあだな。特にこちらは変わりない。お前もなんていうか…元気そうで安心したよ」
「え…!」
なにげない会話なのに、なぜか心臓が跳ね上がる。さっきエーデンが変なこと言うから、こっちまで妙に意識してしまうじゃない。
ティアは急に喉がカラカラに乾き、テーブルの薬草茶をぐびっぐびっと飲む。
口の中に広がる心地よい飲みやすさと清涼感に癒され、じゃなかった…! いけない、いけない。思わずお茶のおいしさに現実逃避するところだった。
お見合いじゃないんだし、なんでそこまで意識する必要があるんだろう。いつも通り話せばいいのに…やっぱり、なんか変だぞ私…! と思いながらも必死で話したいことをまとめる。
「そういえば、さっきは驚いたけど…以前から、リベルさんのところへはよく来てたの? エーデンもラースのこと知っていたみたいだし」
「まあ、そうだな。リベルの婆さんは…神殿とは昔から距離を置いているからな。王都の神殿に行かなくても婆さんのところに行けば大概のことは解決する。まあ、前神官長のハゲが失脚したから、今は王都の神殿に行ってもいいんだが……つい、こっちの方が行きやすくってな」
「どういうこと?」
「ティア、お前…あの女神官長からなにも聞いていないのかよ」
「ん? 特にアイネ神官長からは何も…。ただ、貴女を安心して預けられる、とても信頼できる方だからって、それぐらいしか聞いていないような」
「そうか…」
ラースはちらっとティアの顔をみると、そのまま目を閉じ考え込むようにしばらく腕組みをしていた。
いつものことながら、こいつは私の知らないことを知っているみたいだ。
まあ、いろいろ事情もあるみたいだし、無理を言って話を引き出したいとも思わない。
私もアイネ先生から詳しく話を聞いておけばよかったんだけど、そのうちわかることだから、別にいいかなって思っていたぐらいだし、
たしかに今となってはリベルさんのことは少しは気にはなるけど……
ラースも私もいろいろあったからなあ~。今となってはいい思い出だ。
フィヌイ様とこいつとの旅はとても楽しいものだった。それに私はラースのことを信頼しているし、特に心配もしていない。こいつが、もし話してくれるんだったらしっかりと聞こうと私は思ったのだ。
そして私はエーデンの淹れてくれた温かい薬草茶をまた、ずずっと飲んだのだ。