なぜかの言い争い ~ティア編~(10)
「で、ティア! お前はそこでなにをやってるんだ…」
ティアが柱の影からじ~と見ていると、ラースにあっさりと見つかり声をかけられる。
「え! 気付いてたの?」
「いや、ふつう気づくだろ…。相変わらず意味不明で変な奴だな。お前は…」
ラースの呆れた声に、ティアは素っ頓狂な声を上げると観念したように顔をだしたのだ。
「う、うるさいわね。今は、柱の影から見ていたい気分だったの!」
「なんだ、そりゃ……」
ラースは呆れ果てたような顔をしていたが、エーデンは素早く察っすると内心、なるほどね~とにやにやと含みのある顔をしたのだ。
「そんなことより……それが、久しぶりに会った仲間に対する態度なの! 相変わらず失礼なんだから」
「お前にだけは言われたくなかったぞ…」
本当にどうでもいい…二人の不毛な言い争いが続くかに思えたが、終止符を打ったのは、エーデンがパンパンっと手を叩く音だった。
「はいはい~。二人とも仲が良いことはわかったから、ティアもそんなところにいないでこっちに来る。ラースさんもティアをあおったりしない!」
「なっ…ち、違うってば! エーデン」
「そ、そうだぞ…」
冷静なエーデンの声に、二人は言い争いをあっさりと止めたのだ。
もちろん、二人の反応が予想通りたっだことに、エーデンは内心可笑しくって吹きだすのを必死に堪えていたのだが。
「ふ~ん。二人とも、顔見知りだったんだね」
温かな薬草茶が入った湯飲みをふたつテーブルの上に置くと、エーデンはそう切り出しだしたのだ。
どうも話が長くなりそうだからと、エーデンはティア達を半ば強引に客室へと移動させ。そして、黒猫のベルも人恋しいのか、なぜか一緒に部屋の中へちゃっかりと入ってきていたのだ。
「ま、まあ…いろいろあって、しばらく一緒に旅をしていた仲間かな」
「そんなところか…」
「なるほど、なるほど。それなら二人とも積もる話もいろいろあるだろうし、ゆっくりとお茶を飲みながらでも…!」
そこまで話すと、ふいに玄関の方からチリッンと呼び鈴の鳴る音がしたのだ。
「あ、いけない、患者さんみたい! ティア、ちょうどいいからしばらくの間ラースさんの話相手よろしくね。もちろん、詳細は後からしっかり聞くからそのつもりでね。それじゃ、どうぞごゆっくり~~」
「ちょっ、エーデン待って…!」
ティアの話が途中で途切れたが、エーデンは客室のドアを閉しめると急いで玄関の方に向かい駆けていったのだ。
なんか微妙で気まずい雰囲気の中、ティアはラースと久々に向き合うことになったのである。