戦いの後で
ティアとフィヌイが邪神を封印するために魔力を放ち――
辺りが眩しい光に包まれる。そこまでは、覚えてはいた…。
気がついたとき、ラースはセピトの遺跡の外れに倒れていた。遺跡のどの辺りにいるのかはわからないが、周りに人の気配はないようで。
目を開けゆっくりと立ち上がるとひんやりとした風を感じる。空を見上げれば夜が明ける少し前のようだ。いつの間に外に出ていたのだろうか……
周囲を見回せば、近くにはティアやアリアも倒れている。
思わずティアに駆け寄ると、首の脈に指先でそっと触れ、呼吸を確認する。大丈夫だ…。意識は失ってはいるが命に別状はない。アリアも、もうすぐ目を覚ましそうだ。
だが、神であるあいつらの姿が見えない。
そう思った時――
「これで、終わったな……」
後ろからダレスの声が聞こえたのだ。
ラースは振り返るとそこには、いつもの犬っころの姿をしたフィヌイを抱いているダレスの姿。フィヌイは目をつぶり丸くなり眠っているようにみえる。
「結界のほころびを直し、あいつらは邪神の再封印に成功したのか?」
「……。とりあえずは――だが、フィヌイも神力を使い果たし、当分の間は眠り続ける。詳しいことはフィヌイの加護を受けているその娘に聞くのだな」
「ティアに…?」
ダレスは静かに頷き。
「そろそろ俺もこの場から立ち去るとしよう。どうやら人間どもの気配が近づいているようだ」
声と共に神であるダレス、それにフィヌイはその場からこつ然と姿を消したのだ。
ちょうどそのタイミングを見計らったように、アリアは目を覚まし。
空を見上げれば、霊獣のノアが討伐軍を連れてやってくるのもみえる。
あの後、アリアはウロボロスに協力した罪により軍に連行され、意識を失ったままのティアは王都にある、王族が利用する特別な医療施設へと運ばれたのだ。
セピトの街での出来事はこれで終わりを迎えることとなる。