ティアの真実、そして決断へ(9)
――こんなところで寝てる場合じゃないってば!! なにやってるの…ラースはティアの護衛でしょ!
「お前…なんでここに……封じられてるんじゃなかったのかよ…?」
――それはもちろん! 身体の動きは封じられているからタリスマンを通して今は意識を飛ばしているんだよ。そんなことより、早く起き上がってティアを助けにいかないと…このままで本当にいいの?
「無茶を言うなよ…。俺は深手をおって死が迫っているのに……いまさら何ができるって言うんだ」
――ふ~ん。そうやってまた、逃げるんだ。
「なんだと?」
――今までティアの出生について知っていたのに、黙っていたよね。それに、前聖女のアリアの兄だってなのれなかったし……そのことを引け目を感じているんだ。どうやら、ティアに合わせる顔がないみたいだね。
「……」
――ねえ、死んだらそこで終わりなんだよ。本人はきれいに幕引きができて満足なのかもしれないけど……もし後から後悔しても、やり直しなんかきかないんだよ! 残された人はどう思うかな? 身近な人はすごく悲しむよね。もし悲しむ人なんて一人もいないって言ったら、ずいぶんと自分のことしか考えられない人間なんだって、僕は思うよ。ラースはティアを悲しませたいの? そんな思いをさせたいの……?
「…俺は、あいつにそんな思いなんかさせたくない!」
――だったら、足掻きなよ。最後の最後まで……僕は強い命の輝きを持つ者にしか力は貸さないんだよ。
そういうと、フィヌイは前足の肉球をラースの傷口にぴたっと当てたのだ。そこから温かい光りがあふれだし、その空間すべてを包み込んでいったのだ。