ティアの真実、そして決断へ(4)
「クロノス、あなた…やっぱり私の両親を知っているのね。お父さんとお母さんは今、どこにいるの?」
「そんなのとっくの昔に始末しているに決まっているだろ! 邪神の御心すらくみ取れず、一族の考えそのものがおかしいと立てついた…愚かな妹を、あの男を生かしてなどおくものか!」
「たったそんなことで、ひどいよ…」
「あの男の死は確認している。愚かな妹も生きてはいまい。だが、お前だけがどうしても見つからなかった。いくら探しても…さがしても…ティア、お前は忌々しいことに直系の一族の中で、最も強い魔力を秘めている。それゆえ赤子のお前を邪神の供物として捧げるつもりだったが…。それを察した妹は、生まれたばかりのお前をどこかへと隠してしまった。お前の消息がわかったは、つい最近だがな――」
やっぱり――お父さんとお母さんはもう、この世にはいないんだ…。
予想していたこととはいえ、ティアは悲しくってぎゅっと唇をかみしめる。
だがその時――彼女の小さな肩に、そっと気づかわしげに温かくって優しい手がふれたのだ。
ティアは自分の手を、そっと肩に置かれた大きくって温かいラースの手にふれると、無意識に握りかえしていた。
そして、久々に正面からあいつの顔を見つめると、思わず笑みがこぼれる。
「ありがとう、私はもう大丈夫。なにをするべきかわかっているから、もう自分を見失ったりなんかしないよ。それにね、私はラースのこと信じているから。だからそんなに辛そうな顔しないで。いつものラースじゃないとこっちまで調子がでないよ」
「だが…俺は……」
「これは、私が信じるって言ってるんだからそれでいいの! もし、私が思っているのと違う結果になったとしても恨んだりなんかしない。それは私の見る目がなかっただけ。だから私は、そんなことよりも信じたい人を信じるの」
「俺は…お前を裏切ったりなんかしない」
「ありがとう。その言葉を聞けただけでも十分だし、嬉しいよ。でも、そろそろ気持ちを切り替えないとね。あいつのクロノスの思い通りにさせちゃいけない。それだけは確かだから、それに――」
ティアは笑顔を消すと真面目な顔になり、
「周りの瘴気の濃度がだんだん濃くなっている、そんな気がするの。あいつのことだし、恐ろしいことを何か企んでいる。……でも、本当に邪神なんかを復活させようとしているの?」
「まず、間違いないだろうな」
彼女の問いに答えたのは、フィヌイと同じ地属性の神であるダレスの言葉だった。