表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/269

~閑話~ フィヌイの神託、それぞれの思惑

リューゲル王国の主神としてまつられているフィヌイは、神々の中でも大きな力をもち、大地の豊穣と繁栄、勝利をもたらす神だ。

そして気まぐれな神としても知られている。


神話の時代からの伝承では、一か所に定住することはなく、ある日突然ふらりと旅に出て姿をくらましてしまうのだ。

だが、聖女と共にあるようになると、定住するようになったと伝えられている。


またその姿形も気まぐれな神で、人の姿でいるときもあれば、獣や鳥など気分によってその姿を自由に変えていた。

ただ、青い瞳と白銀の毛は変えず、人はそこから神かどうかを判断したという。

そして共に過ごす聖女の望む姿形を取り、現れるとも伝えられていた。



神殿の中にある祭壇の間にて――

昨日の朝までそこにあったはずの神像は、祭壇の上はなかった。床に落ち真っ二つに割れていたのである。

神官長はそれをじっと見下ろし、うわ言のように呟く。


「神託が下ったのだ・・。主神フィヌイ様が神殿を出ていくと・・」


神殿を離れている間に、こんなことになっていたとは・・

今日の早朝に神殿戻った途端にこの有様だ。


頭の悪い女が、勝手に下働きの娘を追い出したりするから、こんな厄介なことになる。周りの神官連中も役に立たず・・考えただけで胃がムカムカする。


例の頭の悪い女は、神から聖女の資格を剥奪され、混乱し泣きわめいていた。


――聖女でいられるように朝夕の祈りは欠かさず熱心に行っていた。なぜ、資格を剥奪されたのかわからない・・とか、下働きの地味娘が私を陥れただの、今頃は私を馬鹿にして笑っているだの・・訳のわからないことをほざいている。


性格の悪いお前に愛想をつかし、神がお前を見捨てただけだろ!と思ったが、それを言ったところで、アリアは受け入れはしない。

日ごろから、自分以外の誰かが全て悪いと思っている頭の悪い奴だ。

まともに話をするだけ時間の無駄というもの。


それに今、神殿に聖女がいないことを気づかれるわけにはいかない。

民衆の動揺もあるが・・

それ以上に現在の国王陛下は王太子殿下と共に神殿に対し、友好的な雰囲気ではないのだ。政は自らの力で進めたいと考え、神殿を煙たがっているお人だ。

聖女がいないと分かった途端、理由をこじつけ神殿の権威を奪いに来るだろう。


偽物とはいえ、元聖女のアリアにはまだ働いてもらわないといけない。


現在の聖女は・・おそらくはここで下働きをしていた娘、ティア・エッセンの可能性が非常に高い・・。その傍に、我らが神フィヌイ様も必ずおられるはず。


まずは秘密裏にティア・エッセンを見つけ、連れ戻すことが先決だ。

アリアはいつでも切り捨てられる。


まずは神殿の異変を気づかれぬよう、アリアをなんとかなだめて、今日の天赦祭はいつも通り行う必要がある。

だが、あいつは聖女の奇跡を使えない役立たず。その穴埋めとして代わりに神官が治癒を行い、重病人に関しては適当な理由をつけて断るしかない。


一刻も速く、聖女を保護し神殿に連れ戻さなければ、国王陛下に知られる前になんとしてもだ・・


神官長は自らの保身のため、これから先のことに思いを巡らせていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ