ティアの真実、そして決断へ(2)
「うそ……」
私は、思わず呆然としてしまう。
だって…私は赤ん坊の頃に、王都の神殿の前に捨てられていた捨て子で両親の顔だって知らないのに。
それをいきなり、姪だって言われても理解が追いつかないよ。
古くから生まれつき魔力が強い、いくつかの一族があって、それが今でも貴族の家名をもって存在しているんじゃないかってうわさは聞いたことはあるけど……そのうちのひとつってこと?
私が、邪神を崇める一族の出身ってことなの?
それじゃ、私のお母さんとお父さんはどこにいるの?
まったく理解が追いつかず、なぜかはわからないけど私は思わずラースの顔を見てしまったのだ。
あいつは視線をそらすことなく私のことを見つめている。
――でも、その瞳は揺れていて……こんなふうに伝えたいわけじゃないと、後悔の色がありありと浮かんでいたのだ。
私はなにか言おうとあいつに向かい口を開きかけたとき、だが私の問いに答えたのはあのクロノスだった。
「嘘ではありませんよ。これは真実、残念ながら本当のことなのです。その男だって知っていたはずですよ。なのに教えてくれなかったなんて、可哀そうに……。それでいて仲間のフリをしてあなたを騙していたんですね」
「違う! 俺は……」
「言い訳は見苦しいですよ。状況次第では、ティアを始末するよう上からの指示もあったのでは?」
「くっ…!」
「ほらね」
反論できなかったのかラースは口を強く引き結び、クロノスは喉の奥でクツクツと面白そうに笑っていた。
「だって…そんなのおかしいよ。私は、小さい頃から魔力が少なくって普通の人たちとまったく変わらなかったんだよ。それにあなた達の一族は、生まれつき魔力が強いんでしょ。あなたの言っていることはおかしいよ…」
「ああ、そのことですか。どうやら主神フィヌイがあなたの魔力を封じていたようですね。私が、あなたの魔力を追跡できなかったところをみると、どうやら赤子の頃にでも封じていたんでしょう。しかしつい最近、あなたに神の加護を与えてからは、本来の魔力を少しずつ戻していき『聖女』になったから魔力が強くなったんだと錯覚させていたようですね。まあ、あの神は気まぐれ性格で知られていますから、ほんの暇つぶしに、ただの気まぐれでティアを聖女にして魔力を戻していったんでしょうね」
話し方はとても優しげだが、クロノスはまるでティア達が絶望している様子を楽しむように言葉を続けたのだ。