ティアの真実、そして決断へ(1)
「国は討伐隊を編成し、騎士団がウロボロスの各アジトへと一斉に踏み込んでいる。組織が壊滅するのも時間の問題だってことだ」
「騎士団ごときであれば、末端ぐらいなら捕えることはできるでしょう。ですが、いくらあがいたところで上層部までは手は届きはしない。今までと同じように徒労に終わるだけです」
「はっ、セレスティア殿下がそんな生ぬるいことをするかよ! あの人は、やるときは徹底的に叩き潰す。蛇の道は蛇というだろ? たしか…お前らと同じように強い魔力を持つ一族がいたよな」
その瞬間、さっとクロノスの表情が変わる。余裕のある笑みが消えたのだ。
「今まで、傍観を決め込んでいた、やつらが動くだと…」
「末端だけじゃなく、今回は上層部を含めてだ。当主であるゲーエン侯爵も含め幹部全員の捕縛をする予定だったが…まあ残念だが、当主と一部の幹部は自害したとの連絡も入ってきている。お前ひとりがここに来て、余裕を決め込んでいるからそういう事態に陥るんだよ」
「ばかな……当主の、大叔父までもが…ぎりぃ」
悔しそうにクロノスは歯を噛みしめると、ふらつきながら一歩後ろに下がっていた。だがラースは対照的に一歩前へとでる。
「諦めろ……セピトの街にも、国王直属の部隊が入っている。今頃、遺跡の外ではお前の手下たちも捕縛されているはずだ。お前に逃げ場はない。諦めて投降するのなら…まだ、生きられる望みはあるがどうする?」
「フフフ……ククク……」
「なにが、おかしい?」
「セレスティアの犬である、あなたの言うことは理解できましたよ。つまりはこういうことですか? 邪神の御心に共感し、その願いを叶えるために我が一族は生きてきました。そのために我が先祖は、ウロボロスを創り邪神を崇めてきたのです」
「………」
クロノスの言葉にラースは警戒する。嫌な予感がしたのだ。こいつはまだ諦めてはいない……。
彼の思いを嘲笑うように話は続き……
「ですがあなたは、組織だけでなく中核をなす我が一族をも根絶やしにしようとしている。 つまりは私だけでなく、同じ本家の血筋である、私の姪にあたるティアも含めてと言うことですよね!」
「……!」
その瞬間、ティアは弾かれたように顔を上げるとラースの顔をまじまじと見つめたのだ。