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出版記念SS ~白夜の夕食~ ティア視点 番外編

遅くなりましたが、出版記念SSです!

4章以降の旅の途中の話となりますので、

本編の流れを大切にしたい方は、番外編ですので後で読まれた方がよいかと思われます。


 街道沿いのある街の食堂にて——


 ティア達は、街で美味しいと評判の食堂へ足を運び、夕食を取っていた。

 この時期は、白夜の季節と重なり、深夜にならなければ日は沈まない。つまり今は夕方だが、空は明るい。例えるなら白く輝いているのだ。

 白夜の季節は、このままの状態が深夜まで続いていく。


 そうすると、街の人たちは昼間の感覚で夜の時間帯でも街に繰り出していた。子供連れや、若い女の子も気軽に食堂へと足を運び、店内はとても賑わっていた。


 ティアは運ばれてきたばかりの、大きな豚バラ肉のグリルをフォークとナイフを使いぱくついていた。

 こんがりとキツネ色になるまで炒めた、つけ合わせのローストオニオン。それにホクホクのジャガイモも肉の旨味がしみ、この料理にとても合っている。


 至福な時間を味わいながら、チラッと少し離れた所にいる子狼の姿のフィヌイ様の様子を見てみると、どうやら大人気のようで。

 わあ~、可愛い~♡ とか、真っ白でもふもふなんだね~とか、若い女の子やお子さん連れの家族に囲まれ、お菓子を貰ったり、モテモテの人気者のようだ。


 フィヌイ様の可愛さをわかってくれる人たちがこんなにいるなんて、ティアはとても誇らしく、嬉しい気分になる。ついでに料理もすごく美味しい!


 それにフィヌイ様も、そうでしょ! そうでしょ!! もっと褒めてもいいんだよと満更でもなさそうだ。

 ある女の子が、リボンをつけるともっと可愛くなるねとフィヌイ様の頭に青いリボンをつけていたが、


「きゃうっ…」


 と言いながらフィヌイ様はなんともいえない顔をしていた。どうやら、リボンは微妙だったらしい…。 私は、くすっと笑いながらも微笑ましい気分になったのだ。


 そしてメインの料理を食べ終わると今度はデザートが運ばれてくる。

 今の旬は、洋ナシのタルトが絶品だと聞いている。

 ティアはそれをもぐもぐと食べながら、ちらりと右端に視線を向けると…


 そこには、ラースがいた。

 だが、その近くには若い女性の姿も見える。

 私が逆立ちしても絶対に勝てなさそうな、ボンキュッボンの妖艶な美女…。二人は、親しげに話をしているようだが…


「……」


 その途端、なんとも言えない気持ちが私の心に広がったのだ。

 心の底からムカムカするような、複雑な感情で。

 何故かはわからないが、

 くそ~~!! ラースお前、最低だ~! 二人でイチャイチャ親しげに話しなんかしちゃってさ! もう、二度と口なんかきいてやるもんか!

 とか…。自分でもわからないが子供じみた悪態が心を占拠するのだ。


 すきま風が吹く、寂しい心の隙間を埋めるため、私は気がつけばケーキを五つも追加注文して、ガツガツと食べてしまっていた。


 そして——

 気がつけばラースは、いつの間にか美女と別れこちらのテーブルに戻ってきていたのだ。また例のごとく、私の癇にさわる一言をいってくる。


 「お前、またこんなに食っているのかよ…。いい加減、太るぞ」

 「うるさいわね! あの女の人と親しげに話していた、あんたなんかに言われたくないわよ!」

 「ティア、お前なに怒ってるんだ…?」

 「怒ってなんかいないわよ! あの女の人はどうしたのよ」

 「ああ、あの女はスリだ」

 「スリって?」

 「盗み目的で、俺に近づいてきたみたいだな。持っていた財布に手を伸ばしてきたから、これはなんだと聞いたら、そそくさと逃げていったぞ」

 「え…? な、なんだそうなんだ」

 私はなぜか安心すると、ちょうど追加で運ばれてきた本日ふたつめの洋ナシのタルトを口に入れる。

 すると、洋ナシのコンポートの上品な甘みと、タルトのしっとりとサクサクしたクッキーのような香ばしさが口の中に広がる。とても美味しくって幸せな気持ちになったのだ。

 なんか、最初に食べた洋ナシのタルトよりも断然、美味しく感じる。


 そんな私のすぐ近く…足元では、いつの間にか戻ってきた、青いリボンを頭につけた子狼姿のフィヌイ様が首を傾げ、不思議そうに私の顔を見つめていたのだ。


ティアのまだ、気がついていない乙女心。

子フィヌイはどこへ行っても、もふもふでみんなを癒します!

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