策略を巡らすもの
「なにを根拠にそんなことを言っているのか、理解に苦しみますね。ただの、ハッタリですか?」
「いいや、違うな…」
ラースはゆっくりと首を振る。だがその落ち着いた態度にクロノスはイラついたのか。
「どうやら、あなたは状況が呑み込めないようなので、立場をハッキリさせておいた方がいいでしょう。まず、主神フィヌイは神力を封印され、こちらの手中にあります。この力を使い邪神を復活させ、あなたたちもまとめて供物に捧げればそれで終わる。こちらが圧倒的に有利なことに変わりはないのですよ」
「はっ、笑わせるぜ。お前は、俺がなにも手を打たない状態で、ティア達とノコノコここへやって来たとでも思ったのかよ!」
穏やかな笑顔を浮かべ、ぞっとするようなことを話すクロノスに対し、ラースはそれでも余裕があるのか鼻で笑い一蹴したのだ。
「ここ最近、ウロボロスの動きがいつになく活発になっていたことは、こちらでも把握していた。そしてこのまま放置すれば国自体も危ういと…そう考え、セレスティア殿下は、密かに動く機会をうかがっていたんだよ。 今までのようにズルズルお前たちの言いなりになったままでは国は腐り、駄目になるとな。これを機に、今までの悪習を断ち、裏から国を動かそうとするあんたらを一掃する、あの人はそう決断した!」
「それが、どうしたというのですか? 綺麗ごとだけでは、国を正しく導くことはできない。それに王太子ごときに、一体なにができると言うのですか」
ティアにとっては、またまた置いてけぼりの展開だ。
今の状況を説明してくれそうな神様をチラッと見ても、ダレス様は傍観を決め込んでいるようで。……つまり、ラースの任務って、私やフィヌイ様に接触して行動を共にするほかに、ウロボロスを殲滅するためにも動いていたということ?
なんか私たち、フィヌイ様も含め知らぬ間に奴らに対する囮というか、ダシにされていたような気がするんだけど……なんともいえない、微妙な気分だ…。
ウロボロスの奴らを、一網打尽にしようと考えているラースが仕えているセレスティア殿下って、以前フィヌイ様が言っていたように、かなりの腹黒なのかもしれない……。
王族に対しかなり失礼なのかもしれないが、私はそんなことをぼんやりと考えていたのだ。