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疑念


 ――そうか…そうだったんだ。なんで、今まで気がつかなかったんだろう。

 ラースを見たとき、誰かに似てるような、どこかで会ったような気がしたのはアリアさんに似ていたからなんだ。


 たしかによおーく二人を見比べてみると、漆黒の艶やかな髪も目の色も同じ。それに整った顔立ちも面影がある。おまけに、怒った時の目つきまで似ているし…。


 あいつが私に話せないのも仕方がないのかもしれないが……それでも、もやもやとして何とも言えない気分だ。


 僅かな間、私はそんなことを考えてはいたが、私の気持ちとはべつにラースはわなわなと震えていた。


 「本当にアリアなんだな…」

 「ええ、そうよ。やっぱり…兄さんだったのね」

 「お前、こんなところでなにをやってるんだ…!」

 「私は聖女としての責任を果たそうとしているだけ。そう、フィヌイ様を偽物の聖女から取り戻しに来たの。可哀そうに兄さん、こんな小娘に騙されているのね」

 「それこそ意味が分かんねえよ。お前の目撃情報があったから、もしかしたらと思ったが…。お前こそ、誰かに騙されているんじゃないのか!?」


 完全に二人の世界に入っていた。

 私やフィヌイ様、ダレス様までなんか蚊帳の外のようだし、なんか間に入れないんだよね。

 それにアリアさんの言っている意味がやっぱりよくわからない。一体なにをしに来たんだろうか、この人は…? 私は首を傾げ、頭の中では不思議と冷静にそんなことを考えていた。


 だが私が油断していると、不意にこちらに話が振られ――

 アリアさんは、こちらをキッと睨みつけてくると、


 「ティア! フィヌイ様をどこに隠したの? 私に返しなさい!!」

 「へ?」


 思わず間のぬけた返事をしてしまう。

 そんなこと言っても、あなたの目の前にいる愛らしい白いもふもふがフィヌイ様なんですけど…と心の中で突っこんでしまうが、私が答えるよりも速く、アリアさんはさらに畳みかけ。


 「畏れおおくも、主神であるフィヌイ様を騙し聖女になるだなんて、あなたどういうつもりなの!」

 「へ?」

 「は?」


 今度はラースまで思わず『は?』とか間のぬけた声をだしていた。

 いや、別に騙して聖女になった記憶なんてないんだけどなあ~というより、フィヌイ様のごり押しで気がつけば聖女だったわけで…ほんと、一体この人なにをしに来たんだろう?


 「あの…いろいろと誤解されているようですが、まず私は誰も騙してはいません。それにフィヌイ様も隠してもいませんし、むしろ貴女の目の前にいるこの可愛い子狼がフィヌイ様です」

 「キャン!」


 そうだぞ! と言わんばかりにフィヌイ様も自己主張をしてくれた。


 「……!」


 だがアリアさんは理由はわからないが顔を強張らせ、固まったようにフィヌイ様を凝視していたのだ。


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