本質を見極める
えっと、つまりは…ラースの奴は、はっきりそのまま上に報告するんじゃなくって、ある程度曖昧にしてから報告してくれるってことでいいんだよね。ダレス様はそれを承諾したということで。
ティア自身、駆け引きのたぐいに関しては、かなり疎いという自覚はあった。
だからこそ彼らの会話を聞き、自分なりに判断することにした。つまりそう信じることに決めたのだ。
彼らの話は、ここで終わってしまったが……私はもちろん納得などしてはいない。
話をここで終わらせて、曖昧にしてしまうつもりなのかもしれないが、あえて意見を言わせてもらうことにする。
「……今の話の中で、わからないことがあったのですが?」
「ほぉ、なにがだ」
ダレス様は相変わらず前を向いたまま、どこか面白そうに答えていた。
「あの……なぜ貴方が人の中に紛れ暮らしているのか、具体的な理由をまだ聞いてはいません。フィヌイ様のように人との距離を置いていないその理由も」
「――簡単なことだ。人というものを知るため。人は俺が知る限りでは実にわかりにくいもの。良き側面もあれば悪しき側面も持ち合わせている。他の神々は人を愚かな存在だと見限ったが、俺やフィヌイはそうは思ってはいない。完成された存在である神ともまた違う。未知数の可能性を秘めた存在、それが人というもの。俺は人という存在を知りたいのだ。そのために人の中で暮らしている。これから先も俺は人の中で生き続ける。神とは違う面白さ、新たな発見もあり気づかされるものだ」
「人を知るために……」
ティアは、口の中でその言葉を知らずに繰り返していた。
フィヌイはそんな彼女に何も言わずに、耳をピクピクさせ、ちょこんと腕の中から顔を出しティアの顔をじーと見つめていたのだ。