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見守り続ける


 地下へと続く螺旋階段を降りた先には、また回廊のような真っすぐな道が暗闇の中へと続いていた。道なりにしばらくは歩いていると、ふとティアは口を開く。


 「あの、ダレス様。聞いてもよろしいでしょうか?」

 「――なんだ」


 ランプの灯りを手に持ったまま振り返らずに、ダレス様は前を見たままの状態で静かに答える。


 「ダレス様はフィヌイ様と同じで、地上に残ることを選んだと聞いています。なぜ貴方は人の中に紛れ暮らしているのですか? フィヌイ様は人との距離を取り、ある程度の線引きをおこなっています。でも、ダレス様は違いますよね。貴方が人の中で暮しているのは、なにか目的でもあるのですか?」


 「……。ずいぶんと神に対して遠慮のないものだ」

 「す、すみません…」


 ――何言ってるの、ダレス!!  そこがティアのいいところなんだってば!

「…………。そうなのか? …まあ、いいだろう。先はまだ長い、暇つぶしに答えてやってもいい」


 子狼の姿のまま耳をぴんと立て、抱っこしている私の腕を前足の肉球でバシバシ叩いて自己主張をしつつ、自信満々にフィヌイ様は言ってくれたが、

 …でもダレス様のこの沈黙――かなり呆れていたに違いないよね。


 まあ、それでもダレス様は気を悪くしたような様子もなく、話を聞かせてくれるような雰囲気だ。そしてダレス様は静かに話し始めたのだ。


 「昔、この地上には人々と共に神々もまた暮らしていた。だが時は流れ、人々の欲深さに呆れた神々の多くは地上を去り、天上界へと帰っていった。それでも、僅かな神は地上へと残ることを選び――ここまでは、おとぎ話の中でも語られているな」

 「はい」

 「そうだな」


 私とラースは頷き。


 「そしてこの国では、善き神では俺とフィヌイが地上に残ることを選んだ。俺は人の中に紛れて暮らすことを選び、ある程度年数が過ぎればそこを離れ、別の姿かたちを取る。それをずっと繰り返していた…」


 ちらりとダレス様は、ラースをほうに視線を向けると。


 「念のために言っておくが、俺はあの工房には戻るつもりはない。後継として一番鍛冶に後を任せてあるからな。あいつらには、人として鍛冶師として生きていくための術のみ教えている。王太子の密偵どもがいくら探しても何も見つかりはしない。例え俺の痕跡を探しても無駄だと言うことは前もって伝えておこう」

 「それとなく報告はする。俺に言えるのはそこまでだ」

 「ああ、それでいい」


 ティアは思わず緊張した空気に息を飲み、左右それぞれをハラハラしながら見てしまっていた。だが、ティアの不安をよそに彼らの会話はここで終わったのだ。


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