導かれる先へと
「――見せたいものは、この先の遺跡の奥にある。お前たちにとっては、そこが終わりであり始まりとなるだろう」
ダレスの予言めいた言葉に、ティアは自分でもわからないが、なぜかゆっくりと頷いたのだ。
ランプの灯りが静かに揺れていた。
空気はひんやりと冷たくて、辺りは明かりがなければ光の差さない暗闇の中。
地下へと続く螺旋階段をティア達は、鍛冶と鉱物を司る神ダレスに案内され地下へと向かい降りていく。
ティアはぶるっと震えると首元にローブを手繰り寄せ、つい先ほどのことを思い出していた。
約束の日となり、ティア達が再びダレスの工房を訪れたとき。
フィヌイ様の神力が込められた青い宝石。その特別な魔石がはめ込まれた装飾品は、カウンターの上に置いてあった。シンプルなデザインだがどこか惹きつけられるような不思議なペンダント。そのタリスマンを私とラースは受け取ったのだ。
私たちが受け取ったのを確認するとダレス様は唐突に、お前たちに見せたいものがある――そういう言うが早いか踵を返し、工房の外へと出て行ったのだ。
いきなりついてこい!――という展開にさすがに戸惑いつつも、フィヌイ様を見ればいつもの子狼の姿のままで渋い顔をしていた。
やがてため息をつくと、やれやれいつもの事とはいえまったくもう~とぶつぶつ言いながらも、私の腕の中からぴょんと飛び降りると、ダレス様の後を子狼の姿のままテクテクと追いかけていったのだ。
フィヌイ様も似たようなこと、いつもやっているような気が…と思いつつ、私たちも慌てて神様たちの後を追いかけていく。
真っ白い子狼姿のフィヌイ様を見たときの、セピトの街の人たちの反応が私は心配だった。
だが今回は予想とは違い、フィヌイ様の姿を視界に入れても街の人たちの反応は、前ほどでもなかったのだ。
振り向きこそすれ、私たちを見るなり大騒ぎになったり、とり囲まれて拝まれたりすることもない。
どこかに向かい急いで歩いているようなので邪魔をしてはいけないと思ってくれたのか、とにかくスムーズに街の中を歩くことができたのである。
私たちは、はるか前を歩くダレス様に置いていかれないように必死に後を追いかける。そして、気がつけばセピトの街の外れにある遺跡へと足を踏み入れていたのだ。