鍛冶と鉱物を司る(7)
「地の精霊たちが俺のところに訪れたのは…まあ、そういうわけだ。おかげでお前たちの足取りを正確に掴むこともできたというわけだ」
――ダレスとは長い付き合いだからね~。当然、僕たちがここに向かっていることにも気づいているとは思っていたし、その辺はまったく心配はしていなかったよ。だから、いろいろと寄り道もできたわけだしね。
「お前が真っすぐにこの街を目指さすことなく、あちらこちらへと寄り道してくれて、俺としては助かったよ。おかげである程度の準備は整えることができた」
ここでふと言葉をきると、ダレス様は意味ありげな表情をしたのだ。
「まあ、それでも情報を伝える速さだけに特化するなら、風属性のものたちの方が速いがな。例えばそこの霊獣のように」
なぜかダレス様がすっと視線を向けたその先にティアは目を向けると、そこにはラースの姿があった。
コイツがどうかしたのかと…? ティアは首をかしげる。だがふと気がつくと、いつの間にやらラースの肩には風の霊獣ノアが止まっていたのだ。
あれれ、いつの間にノアは戻ってきたんだろう? 全然気がつかなかったよ。とティアは目を丸くする。
じーとラースを見つめたまま、ダレス様はぽつりと呟き。
「ところでその男を、お前は…この娘の傍に置いているようだが、このままで本当にいいのか?」
――ふふふっ大丈夫だよ。ティアの護衛と言うことで僕の加護をほんの少しつけているからね。
「ああ、そういうことか……」
ダレス様は何とも言えない微妙な表情で、ラースを見ている。私には、なんか同情のような憐れみのまなざしに見えるけど気のせいだよね。
当の本人は、何か言いたげな顔をしているが、それでも黙っているのでとりあえずは大丈夫ということにしよう。ティアは余計なことを考えるのはやめることにした。
「……。それはともかくとして、確認だが――今回は2人分のタリスマンを作れと言うことでいいんだな?」
――う~ん、そうだね。ティアの分はもちろんお願いするけど、こいつはまあ、そうだね余裕があったらお願いするよ。
「フィヌイ様―!!」
――やだな、冗談だってば! ティアったらそんな怖い顔しないでよ。と、いうことで2人分で頼むよ。
「わかった。この魔石は人には危険すぎる代物だ。取り扱えるのは、どう考えても俺しかいないしな。いいだろう、その仕事引き受けよう。5日後にまたここに来るといい」
ようやく話がまとまったようで、ティアはホッと胸を撫で下ろしたのだ。だがその時、ダレスはある言葉を付け加えていた。
「――そのとき、見てもらいたいところもあるしな」
意味深げなその言葉がなぜか心に引っかかったが、ティア達はそのまま工房を後にし、その日は宿へと戻ったのだ。