鍛冶と鉱物を司る(6)
――え~! 地の精霊たちも大袈裟だってば! そんなに驚くことじゃないのに~
「潜在的に魔力が強く精霊からも気に入られた人間が、フィヌイの加護を得たことにざわついている。こんなことは、この国を創った初代国王以来だとな。実際にそれ以降のお前は、あえて人の神殿にとどまり、聖女を通し神託を伝えるのみだ。ずいぶんとお前にしてはおとなしくしていたようだが……。まあそれはいいとして、それでなくとも一度動き出すと、お前の無茶ぶりに地の精霊たちも振り回されることは身に沁みてわかっているのだろう。精霊たちもほとほと困り果てて、俺のところに相談しにくるのだ。お前も精霊たちを、もう少しいたわってやれ」
――は~い。でも、そんなにこき使っているわけじゃないのに…ほんとひどいな~
フィヌイ様は子狼の姿のまま、前足の肉球でカウンターをぺしぺしと叩きながらむくれ、ダレス様に愚痴っている。そのしぐさも、やっぱり可愛い。
いまダレス様の話にでてきた『精霊』についてだが、人に語り継がれている伝承によれば神様の眷属であり、自然界の中から初めに生まれた存在。――つまりは、自然を司る四大元素、火風水土をことを示している。
精霊はそれぞれの属性の神様に仕え、あくせくと働きながらも大自然の摂理を動かしているといわれている。そして、稀に気に入った人間には祝福を授ける。それが、強い魔力を持つ人間だともいわれているのだ。
また精霊に近い者たちの中には、精霊の後から自然界より生まれでた、『妖精』や『霊獣』なども存在する。
妖精の場合、天真爛漫でとても自由な性格をしており、色んなところにおもむいては、悪戯をしたりそうかと思えば、人間を助けたりすることもあるそうだ。
また強い魔力を持つ人間のもとに集まりやすく、たびたび騒ぎを起すこともあるらしい。
妖精に悪気はないようだが…魔力の強い人間としてはたまったものではない。自身の魔力を制御できれば特に問題ないが、制御できなければ妖精に振り回され暴走させる危険があるのだ。
だからこそ早急に魔力のコントロールを覚えるため、一部の魔力を扱う家柄の者を除き、強制的に親元から引き離され魔法学院に入れられるのだと、たしかラースが以前そんなことを話してくれたような。後は、フィヌイ様が付け足して教えてくれた内容もある。
そして霊獣についてだが――大半の霊獣は北の大陸の端にある大森林にひっそりと暮らしている。
だが……ごく少数の霊獣は、魔力を持つ者たちと契約を結び共にこの世界に存在していると聞く。例えば、ラースと契約を結んでいる鳥の霊獣ノアがそれにあたるようだ。
そんな私も、つい最近までは…何も知らないただの庶民だった。
もちろんそんなレア度の高い神様を始め、精霊云々の姿を見たこともなければ、存在そのもの自体、身近には感じられず、どこか遠い伝承の中の出来事としか認識していなかった。人生とは何が起きるかわからないもの。
まあ最近は、フィヌイ様の特訓のお陰で、地の精霊の存在をはっきりと感じられるようになってきたが。でもそれは…フィヌイ様という神様の加護があってこそのはず。なのにダレス様の言い方では、私にはほんらい強い魔力が備わっているように聞こえるのだ…。ラースが言っていた内容と同じ。
そんなティアの思いを知ってか知らずか、ダレスたちは話を続けていく。