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鍛冶と鉱物を司る(5)

 「…つまりお前は、もう一度俺に神力が込められた魔石を使い、タリスマンを作れと言いたいんだな」


 フィヌイは、白い子狼の姿のまま真剣な表情で頷く。


 ――そうだね。こんなこと頼めるのは、鍛冶と鉱物を司る神であるダレスしかいないんだよ。それにこちらも、できるだけの備えはしておきたくってね。

 「備えか…」


 ダレスはぽつりと呟くと丸太のように太い腕を組み、ため息を吐きつつ、赤い目でティアを見つめたのだ。


 「これから起こる出来事を考えれば、当然と言えば当然か…。なるほど、お前がそうなのだな。新しくフィヌイが選んだ、神の加護を授かる人間というのは」


 ダレス様はなぜか『聖女』とは言わなかった。あえてフィヌイ様の加護を授かる人。そういう言い方をしている。本来ならばそれが正しい呼び名なのかもしれないとティアは思ったのだ。



 「ええ、とりあえずは。でも私は神殿でしっかりとした教育も受けてはいません。正直、フィヌイ様の期待に応えられるかわかりませんが…それでも、できる限り精一杯努力をしていきたいと思います」

 「ふっ、なるほどな」


 今まで厳しい表情をしていたダレスは、なぜかふと表情を和らげたのだ。


 「さきほども言ったが、お前たちのことは以前から聞いていたのでな。たとえば、このセピトの街に向かう途中、伝染病が発生した地域に赴き病を癒し、人知れず民を救ったとか。また土砂崩れにより、のみ込まれそうになった村を救い、災害を静めたとか。他にも様々な奇跡を起こし人々を救っていると聞いているぞ」


 「な……!」


 ラースは思わず驚きの声を上げる。

 あえて王城にも報告していない細かな内容までこの男は知っている。いや、神なのだから知っていても不思議ではないのかもしれないが…


 隣を見ればティアは他人事のように、ぽわ~んとした表情で神様ってやっぱよく知っているんだ。凄いんだなあ~と感心しているし、

 フィヌイにいたっては緊張感がない間抜け顔で、また呑気に毛づくろいなど始めている。


 目の前にいるこの呑気な連中が、それほどまでの奇跡を起こしている奴らなのかと、実際にその事実を見てきたラースでさえ、思わず開いた口が塞がらず唖然としてしまう。

 いや今問題はそこではなく、どうやってダレスはその情報を知りえたかである。

 神だから知っているのだと言われてしまえばそれまでだが、できればその方法を知っておきたいと彼は思ったのだ。


 「簡単なことだ。地の精霊たちが騒いでいた。強力な地属性魔法を使いこなし、新たにフィヌイの加護を得た人間が現われたとな」


 そんなラースの思考を読むように、ダレスは言葉を静かに続けたのだ。

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