夜ふかしをする子狼
「そういえば…石はずっとラースが持っていましたね。でも、なんで石を持っているとあいつは疲れるんですか?」
――ティア…あれは、ただの鉱物とは違うんだよ。ざっくり言うと凄まじい力を秘めた鉱物。人はこれをひとくくりに『魔石』と呼んでいる。神聖なものから邪悪なものまでさまざまだけど、僕のような神が神力を込めて作ったものは特に貴重とされているんだ。
「そういえばラースも確か……フィヌイ様が創った綺麗な石を魔石と呼んでいたような…」
――魔力を持つ者の間で多く出回っている、弱い魔力を秘めた透明な魔石なら、濃度が薄いからふつうは影響はない。…でも僕が直接、神力を注ぎ込んでいるからこの魔石は相当な力が宿っている。あいつもそこそこ魔力があるから無事だけど、それでも精神力をかなり消耗しているね。これがもし普通の人間なら生命力そのものを持っていかれるかもしれない。
「大丈夫なんですか、ラースは…。そんなに精神力を消耗するだなんて…」
――これは、あいつにとっての隠れ訓練なんだよ! 僕の神力に飲み込まれないための強い精神力を身につけるためのね。なんたって、聖女の護衛だから必死で頑張ってもらわないとね。
フィヌイ様はびしっとシリアスな顔で言っていたが…。う~ん、ラースってフィヌイ様に結構こき使われているような気がするんだけど…気のせいだよね。きっとフィヌイ様にもなにか考えがあるはず! とティアはそう思うことにした。
考え込むティアをよそに、フィヌイはふさふさの白い尻尾を振りながら相変わらず星空を眺めていた。
いつの間にか毛並みは真っ白な冬毛に変わり、月の光りに照らされて輝いている。真っ白なもふもふの毛並みに青い瞳。思わず見惚れてしまいそうで、なんだか絵になりそうな光景だ。
――それにしても、今日は夜空の星が綺麗に見えるね。ここは昔と変わらない。流れ星もたくさん見えるし、幾ら空を眺めていても飽きないよ。
「わあ、ほんと素敵…! 街の中なのにこんなにたくさんの星が見えるなんて、この街は空気が澄んでいるからこんなにも星が見えるんですね」
――まあ、そうだね。ここの空気は清浄なものに満ちているからね。
そういいながら私が眠った後もフィヌイ様は、朝方まで夜空を眺めていたのだ。