悪役令嬢の喋り方・・
ティアは何とも言えない複雑な表情をしながら、後悔したのだ。
しまった~ 思わず地が出ちゃったじゃないの……
気がつけば、聖女らしい喋り方は失敗に終わっていた。
「結局、何だったんだ。あの変な喋り方は?」
――オッホホホホ、なんていきなり言い出すからびっくりしちゃったよ。
「いや、あれはその……聖女らしい喋り方をしたほうが良いのかなって思って…つい」
「はあ、なにいってるんだお前?」
――え~おかしいてば! そもそもあんな、喋り方する聖女なんていたかな??
「ほら、だって私が見た聖女様のイメージがそうだったから、そうなのかなって……」
「……」
途端にフィヌイとラースは渋い顔をする。
「おい! 前の聖女はあんな喋り方だったのか?」
――う~ん……まあそんな風にいつかは喋りだしそうな雰囲気ではあったけど…基本、聖女はそんな変な話し方はしないよ。ティア、それ違うってば。
「お前、完全に方向性間違ってるぞ。これじゃ、どこぞの性格の悪い令嬢の喋り方じゃないのか?」
「え? そうなの……」
――ティアたら~。 前にも言ったけど、気楽に喋っていいんだからね。こっちは具合が悪いのかと思って心配しちゃったよ。
「まったくだ…」
フィヌイはティアの腕にあごをのせると困ったような顔をし、ラースもやれやれといったように呆れたのだ。
「せっかく、話し方を変えて聖女らしくしようと思ったのに~、ふたりしてそんな言い方しなくても……わかりましたよ。今まで通りに喋りますよ……!」
それからティアは、宿屋で夕飯を食べる時までぶつくさ言いながら頬を膨らませ、むくれていたのだ。