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静かな夜~前編~


――この世界には、魔法が存在する。


魔力の大きさは人それぞれだが、微力ながらでも全ての人は魔力を持って生まれてくるのだ。


ただその魔力を開花させるには、魔法学院に通い魔力について学ぶか、優れた師匠について学ぶしかない。


魔法学院で学ぶ場合、魔力の才能の他に多額の学費が必要となる。つまり通うことができる者は限られることになり、

大富豪か貴族以上の身分の者、魔法の秘術を受け継いでいる特別な家系の者のみ。

また稀にだが、潜在的に強力な魔力を持つ者が特待生として迎えられることもある。だが、それもごく僅かしかいない・・

それほど、普通に生活する人々にとって魔法は遠い存在――


その魔法も、大きく分けて攻撃魔法と治癒魔法の2種類が存在する。


攻撃系の魔法は、地・水・風・火の四大元素を源としており、相手に危害を加える使い方がほとんどで戦乱の時代には重宝されていたが、平和な時代が訪れると疎まれ、幾つかの一族がその秘法を細々と受け継ぐのみ。


一方、治癒系の魔法については、神官たちの間で大きな発展を遂げていた。神の威光と結びつける目的もあったため、神の力で奇跡を起こせると(うた)っているのだ。

それでも、かなり熟練の治癒魔法の使い手、つまりは神官でも中度の怪我や病を治す程度にとどまり重い病や、怪我を治すことは出来ない。


ただ一人、聖女を除いては――


聖女は神の代行者であり、神の力を直接体内に取り込み、その神力で癒しの御手を使うことができる。

死者蘇生以外であれば全てが可能。重い病や怪我だって治すことができるのだ。

ただし、その使い手が人間であることを忘れてはいけない・・


現在は平和な治政が続いており、普通に平民として暮らしていれば魔法を見ることもなく一生を終える人も多い。そんな時代でもあった。



ティアはゆっくりと目を開けた。

始め部屋の天井が見え、次に白くて大きな動物が遠慮がちにこちら覗き込んでいた。青い目がとても綺麗で、よく見ればもふもふの白い狼が心配そうに顔を覗き込んでいるようだ。


――ティア、気がついたんだね。


真っ白な狼の耳が、しゅんとして申し訳なさそうに垂れている。


「フィヌイ様・・?」

――良かった・・。このまま目が覚めなかったらどうしようって、すごく不安だった・・

「・・?」


ティアは今までの出来事を思い出していた。


「そういえば、私・・救護院の手伝いが終わった後、ふらふらになりながら部屋に戻って、自分のベットで眠っていたような・・」


――その疲労は癒しの御手を使い過ぎたからなんだ。つい久しぶりで張り切っちゃって、ティアの体力の限界を考えていなかった。本当にごめんね。

「そんな、謝らないでください。私も使ってみるって言っちゃたし、気にしなくっていいんですよ。我儘はおあいこです」


そう言いながらフィヌイの首筋をゆっくりと撫でる。外側の毛は固めだが、内側の毛は密集してとても柔らかい。もふもふしてやっぱり幸せな気分になる。


――ティアは優しいね。

「優しいのはフィヌイ様ですよ。私、今がとても幸せです。ずっと独りぼっちだったから・・傍にいてくれて嬉しい」


フィヌイは何も言わなかったが、そのぬくもりから心の温かさが伝わってきたのだ。


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