鳥の霊獣仲間になる
「……ところでラースは、この鳥の霊獣ノアと契約をしているのよね?」
「ああ、そうだ…俺は風の属性に適性があるからノアとは相性が良くってな。こいつは空も飛べるし速さもある。主に空を飛んでの偵察や、瞬間移動を活かした緊急時の連絡とかが得意だ。それと、こいつは優しいから荒事は好まない」
「ふ~ん、そうか……霊獣のノアはとても性格が良さそうだね。ラースの霊獣だからもっと性格が悪いのかと思ったけど、主人に似なくて一安心だわ。これなら、ノアとも上手くやっていけそう」
「なんだそりゃ…」
なぜだかラースは口の端を引きつらせ不満げな顔をしていた。
「……念のために言っておくが、こいつは風属性の攻撃もできるがあくまでサポート役だからな。契約しているからといって霊獣の気持ちも考えず、こき使う奴もいるが俺は嫌がっているノアを無理に使役するようなことはしたくない」
なるほど……こいつはこいつなりにいろいろと考えがあるようだ。そういうところは、良い奴なんだよね…
北の大陸の端にある大森林には霊獣がひっそりと暮らしている。
そして――ごく少数の霊獣は魔力を持つ者たちと契約を結び、共にこの世界に存在しているという話を聞いたことがあるが…私自身、霊獣を見たのはこれが初めてだったりする。
主神であるフィヌイ様ほど難易度は高くはないが……それでも普通に生活している庶民が霊獣を見ることなど、まずありえない。魔力を持つ人間と同じくらい貴重な存在だといってもいいくらいだ。
「もちろん。私もフィヌイ様もそんなこと望んではいないし、この子ができることを一生懸命やってくれればそれでいいよ」
「そうか……」
ラースは安心したように短く息を吐いたのだ。
「でも…霊獣のノアと契約をしているのに、ラースはフィヌイ様の加護を受けることができるみたいだけど……それって大丈夫なの? 魔力が絡んだり反発したりとか危なくない」
――ふふふっ、それは大丈夫! 僕は神様だからね。この世界の法則で、基本的に霊獣と結べる契約ははひとつだけって決まりがあるんだ。ふつう契約している霊獣がいるにもかかわらず、別の霊獣と強引に契約を結ぼうとすると、魔力が反発し後から結ぼうとした契約は弾かれ、人も被害を受けることもある。でも神様は神力を行使して加護を授ける尊い存在。霊獣は霊力を使って番となる人との間で契約を結ぶけど、僕は神力を使うからね。もともとエネルギーの質が違うから特に問題はないんだよ。
フィヌイ様は子狼の耳をぴんと立てると自信満々に答えたのだ。
「なるほど……さすがは、フィヌイ様!」
「それは加護じゃなくて……嫌がらせっていう名の呪いの間違いじゃないのか…」
「ぎゃう…!」
私は納得し頷いたが、ラースは不満そうにぶつぶつと何やら呟いていた。フィヌイ様はあいつの一言に、とても不満そうな顔をしていたが…
案の定、途中フィヌイ様がラースに口の利き方が悪いと、天罰をあたえることもあったが……
まあ、それでも穏やかな時間は流れ……しばらくはお互いのことを話したり、くだらないことを言い合ったりしながらその日の夜はふけていったのだ。