詳しい話は置いといて
フィヌイ様はお座りをすると、私の目を見てゆっくりと語りかけてきたのだ。
――とりあえず詳しい話は、ラースから聞いたほうがいいじゃないかな。あいつも直接、ティアと話がしたいって感じだったよ。でも詳しい話は、はぶいて簡単に話すとあの後すごく大変だったんだよ。ティアだけじゃなく、鉱山の中で倒れている人たちも運んで手当をしなければいけなかったからね。
この話から察するに、どうやら私が意識を失い眠っている間、とてつもなく大変だったらしい。
「あ! そうだ。あの…鉱山で働かされていた人たちは、皆さん無事だったんでしょうか……!」
――みんな無事だよ。命はなんとかとりとめた。ティアの広範囲の治癒の奇跡と、ラースが迅速に動いてくれたおかげでね。どちらかが欠けていたら、こんなにも上手くはいかなかったかもしれない……。
フィヌイはこくっと頷き、これまでのことを簡単にティアに話したのだ。
私は村の人たちがみんな無事だったと聞きほっと息を吐く。
「本当に、良かった~ ……でも迅速にあいつが動いたっていったい何をしたんですか?」
――あいつが外から応援を呼んだんだ。
「……?」
ティアが意味が分からずぽかーんとしていると、部屋の外から控えめに扉をノックする音が聞こえたのだ。
フィヌイは、可愛い子狼の耳をぴくぴく動かすと。
――ほら、噂をすればなんとやらだね。詳しい話は、僕よりもあいつから聞くといいよ。
そういうと、子狼の姿できりっとした表情を作っているようだった。
いや、なんというか……大きな狼の姿なら神様の威厳と風格があって後光がさすように神々しいのだが、なにせ今は子狼の姿……残念なことに、凄く頑張って偉そうにしている白い子犬にしか見えなかったのである。