最高級もふもふクッション?
遠のく意識をなんとか保とうとしたが、またしても私の記憶はそこでぷつりと途切れてしまったのだ……
――そして、私はまた夢を見ていた。
どうやらこの間の夢の続きのようで……
光の球体から子狼の姿に形を変えたフィヌイ様が、幼子になった私の傍に近づくと、ぴったりと寄り添い丸くなったのだ。
息が白くなるほどの寒い夜だったので、どうやら私のことを温めてくれるようだ。
温かくってとても幸せな気分になりうつらうつらしていると、神殿の方から人が近づいてくる気配がした。やっと神殿の前に捨て子がいると気がついたらしい。
そこで夢は終わり、次に目が覚めたとき始めて視界に入ったのは、横に少し伸びだ白くて大きな毛玉のような物だった。
「あれ……これなんだろう? クッション…それとも抱き枕? は! こ、これは私が求めていたフィヌイ様のもふもふを再現した、夢にまで見た最高級もふもふクッションでは!?」
私はまだ夢の中の出来事だと思い、クッションを引き寄せると力の限りむぎゅっと抱きしめる。そしてクッションに顔をうずめると心おきなく頬ずりをしたのだ。
うふふふ… なんか…フィヌイ様と同じお日様の匂いもするし、手触りも最高だ~
寝ぼけた状態で、心ゆくまで顔をうずめるともふもふを堪能し幸せに浸っていたのだ。
だが突然、クッションがぞもぞと動きだす。
急に動き出したかと思うと、ふさふさの尻尾がぴんと伸び、ふたつの直立耳がひょっこりとその姿を現すと。
くるっと振り向き、私の顔を見ながら困ったように目を棒線にして、お饅頭のように頬を膨らませた顔がそこにはあった。こ、この見慣れた愛らしい顔は…
「ふ、フィヌイ様…! すみません…つい、もふもふ好きの感情が暴走してしまって…」
――もう、僕はクッションじゃないんだけどな。…まったく、まあティアだから許すけど、
耳をぴんと立て、いつもの白い子狼の姿のままで文句を言う。しかし後半はなにかぶつぶつと言っているようだったが…
――今、僕はティアを治療していたんだよ。ティアがまた大きな魔力を使って倒れたから、ず~~と傍にいて神力を注いでいたんだからね。
「またしても、ご心配をおかけしました……」
穴があったら入りたい気分だ。無理はしないと言ったばかりなのに、みんなにまた心配をかけてしまったのだから。
とりあえず――穴はないので布団に包まりミノムシのようになってみた。
「そういえば、ここは一体……?」
布団に包まりながら、きょろきょろとティアは周りを見回したのだ。
民家のようだが、シャラー村に入ったときに泊ったデックくんの家とは明らかに違っている。
部屋はこじんまりとした客室のようだし、天井は高く家具は古いがしっかりとしたものが使われているようだ。
なによりベットがあり、そこはちゃんとした寝床になっているのだ。
そして私は……今までフィヌイ様をクッションまたは抱き枕のように扱っていたのだと気づいたのだ。
神様をクッションにするなんて…! なんて畏れ多いことをしたんだ! と思ったが、当のフィヌイ様は特に気にしている様子もなく、
大きく伸びをするとベットから跳び下りて扉の前までてくてくと歩いていき、私の方を見てお座りをしたのだ。