暗闇の先へと向かう(4)
魔力の衝撃波をクロノスはティアにむけて放ったのだ。
そしてフィヌイが、みんなを守るため動くよりも速く――
突然――フィヌイの後ろから、大きな魔力が膨れ上がり広がると衝撃波とぶつかり、クロノスへと弾き返していた。
クロノスは驚きながらもそれを紙一重で避ける。衝撃波は今まで彼が立っていた岩壁へと衝突……そこには鋭い刃でくり貫いたような鋭利な穴が開いていた。
その後から……さざ波のように柔らかな光の波紋が、ティアを中心に坑道内を余すところなく広がっていったのだ。
一瞬、私は何が起きたのかわからなかった……
ただ、とっさにみんなを守ろうとして無我夢中で魔力を放っていたような気がする。
ラースが驚いた顔をして私のことを見つめている。
「ティア…お前……」
「今、何が起こったの……?」
「お前、覚えていないのか……」
ラースの問いかけにティアは呆然としながらも、こくりと頷いたのだ。
そこにフィヌイ様が急いで私の元に駆け寄ると、気遣うようにゆっくりと話しかけてくれる。
――今…ティアは、あいつの攻撃を弾いて、一瞬でザイン鉱山の瘴気を浄化してしまったんだよ。
「え…? 私が……」
目を見開くと、驚いたようにフィヌイ様の顔を見つめ理由を聞こうとしたその時、
「やはり、そうでしたか……」
突然、クロノスの声が響いたのだ。
「あの時の赤子だったとはね… これで最終的な確認もとれましたし、私は引くとしましょう。目的も達成することができました。今日は顔見せ程度ということで……」
「おい、待てよ! なに勝手に引き上げようとしているんだよ! それよりも鉱山で働かされている村人は無事なのかよ!」
「うるさい飼い犬ですね…… 飼い犬の躾けはしっかりとした方がいいですよ」
「なんだと!」
「我らが神の力を復活させるため必要なものは見つけて回収しました。いらなくなったものを処分しようとしただけ。瘴気を発生させ、不要になった虫けらの生命力を吸い取ったぐらいで一体なにを怒っているのですか?」
「貴様……!」
「そんなに心配なら、私の相手などしている場合ではないでしょうに」
おちょくるようなことをラースを言い、クロノスは酷薄な笑みを浮かべる。
そして、私とフィヌイ様に顔を向けると……
「では主神フィヌイ様、お会いできて光栄でしたよ。今度は懐かしい方としっかりともてなしますので、それまでどうぞお元気で」
そう言うと忽然と姿を消したのだ。
ティアは呆然と立ちつくし――目の前が暗くなった思った瞬間、また意識を失ったのだ。