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敬語は禁止・・?


「いや~、美味しかった。お腹が満腹になるとこんなにも幸せなんだ」

――食べすぎじゃないの?

「そんなことないですよ。これでもまだ腹八分目ですから・・」

――ふ~ん、そうなんだ。

「フィヌイ様、何ですか。その、ふ~んって」

――そのままの意味だよ。ティアってよく食べるんだなって感心しちゃった。


真っ白な尻尾をふりふり、本当に感心したようにティアを見つめている。

・・乙女心は複雑だ。大食いを神様に褒められてもなんか嬉しくない・・


今日は天赦祭ということもあり、救護院の食事はいつもより豪華なのだ。

と言っても、神殿の偉い人たちの食事に比べればもちろん質素だし、それでもティアのような下働きの人間が普段、口にしている物と比べても、はるかにおいしく感じるものばかりだ。


いつも口にしていたのは、薄いスープに固いパン。たまに蒸したジャガイモがついてくる程度。まあ、救護院の食事も普段はこんな感じらしいが、それでもここの料理担当者はかなりの腕前とみた。


あの後――ティアと子犬(?)姿のフィヌイは救護院の客室に案内され、その部屋ですぐに昼食となったのである。


内容は、魚入り野菜スープと固めのパン。

神殿にいた頃と同じようなメニューだが・・それは大きな間違いだった。

このスープがまた絶品なのだ!

スープの中にはじっくりと煮込まれた玉ねぎやキャベツ、ニンジンの甘みもよく出ていて、それでいてほくほくのジャガイモ・・これがまたおいしい。

そして、この淡白な白身魚の干物。少し入っているだけにも関わらず、これがまた良い出汁になっている。魚の臭みもハーブで消され後味がしつこくなく、いくらでも食べられるのだ。


胃袋が空になっていても身体に優しい味で、いくらでもお腹に入ってしまう、この美味しさ!

結局、ティアはスープを三杯もお代わりしてしまったのだ。


今日は多めに作ったのでお代わりしてもいいと言われお言葉に甘えてしまい、食べ終わってから考えると女子としてさすがにおかわりしすぎたと反省する。


一方、子犬(?)姿のフィヌイ様は、給仕係の女の子に愛敬を振りまいて山羊のミルクももらっていた。

共にお腹も膨れて、食後の休憩をしながらティア達はくつろぐことにする。



そうしてしばらく休憩していると、フィヌイ様はふと何を思ったのか前足でミルクが入っていたお皿をパシッと叩いたのだ。


ちなみにミルクはきれいに飲み終わった後なので、中身が飛び散る心配もなく、子犬の軽い力なので反動でお皿はカタカタとバランスを崩し、揺れるに留まる。



――そうだ! ティア言わなきゃいけないことがあったんだ。

「どうしたんですか?フィヌイ様」

――そのしゃべり方。他人行儀に聞こえるから、敬語禁止ね!

「いや、でも・・」


神様に向かって、しかもこの国の主神に向かって敬語なしでいきなりしゃべれと言われても困るし、正直難しい。

ティアは少し考えると・・


「・・・。わかりました。でも、いきなりは無理なので少しずつ、直すようにしますからそれでいいですか」

――むぅぅ・・、わかった。それでいいよ・・


少しむくれてはいたが、なんとかフィヌイ様は納得してくれたようだ。


「ねえ、フィヌイ様。ご飯も食べさせてもらったし、私これから救護院のアイネ先生のお手伝いに行こうかと思います。この部屋、空けてもいいでしょうか」

――いいよ。けど、僕もついていくからね。


子犬と一緒はちょっと・・と思っているとその考えを読んでか、


――姿は消すから大丈夫。もちろんティアにはしっかり見えるようにするし、それ以外の人に絶対に見えないようにするからね。


言うが早いか、ぶるっと身体を震わせると、もとの大きな白い狼の姿に戻ったのだ。


気がつけばティアは、またフィヌイに押し切られてしまったのだ。

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