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ここに来た理由・・

 「ああ――そうだ。忘れないうちにこの綺麗な石、ラースに預けておくね!」


 ティアはラースの視線に気がつくと、子狼姿のフィヌイを抱きかかえたまま駆け寄り、片手で自分のカバンの中を探る。

 すると、先ほどフィヌイが神力を込めて創ったという群青色の魔石を取りだし、彼の手の上にのせたのだ。

 驚いたようにラースはティアの顔を見つめる。


 「フ ィヌイ様の話によると、このままでも魔力を飛躍的に上げたり、疲れを癒す効果があるみたいだからラースが持っていたほうが役に立つよ。もちろん、いずれは加工しないといけないみたいだけど、それまでの間だけでもいいから預かってくれると嬉しいな」

 「……。それはいいが本当に俺でいいのか? お前が持っていたほうが良くないか……」

 「私には主神であるフィヌイ様がいるから大丈夫! それよりも、ラースが持っていたほうが加護の力が強まるってフィヌイ様も言っていたし、きっとあなたを守ってくれるよ」


 「きゃう、きゃう!」


 ティアに抱えられたフィヌイもラースの顔を見て、ドヤ顔でなにかを言っている。


 ――そうだぞ。少しの間だが、ありがた~く敬い大切にするんだぞ! わかったな!


 とかなんとか……この犬っころは偉そうことを言っているんだろうなと、ラースにもフィヌイの言っていることがなんとなく解ってきたのだ。


 彼は、フィヌイが神力を注ぎこみ創りだした群青色の魔石を受け取ったのだ。

 大きさは子供の拳ほどだが、持った瞬間――大きな魔力の波動を感じる。それに、不思議なことに……鉱石だというのにそれほど重さを感じない。

 彼はフィヌイの魔石を落とさないように、布で丁寧に包むと懐にしまったのだ。


 「おい、そういえば……村に着いたら犬っころじゃなかった……主神フィヌイ様はここに来た理由を話すって言ってたよな。結局その話はどうなったんだ?」

 「あれ? そういえばフィヌイ様そんなこと言っていたような気が…」

 「……。お前…すっかり忘れていたのかよ」

 「し、失礼ね! ちゃんと覚えていたわよ。そんな重要なこと、いくらなんでも忘れたりしないてば!」


 ラースは疑いの目でティアを見つめる。

 こいつ、完全に忘れていやがったな……! こんなのが聖女で本当に大丈夫なのかよ? と毎度のことながらラースに、また心労がたまっていったのだ。


 そしてすぐ下を見れば、子狼の姿をしたフィヌイがティアの手を離れ地面に座ると、後ろ足で耳の辺りを懸命に掻いて、目を棒線のように細め、気持ちよさそうな顔をしていたのだ。


 おい……! こいつ人の話を聞いているのか……

 完全に人をおちょくる態度にラースはこめかみに青筋を浮かべるが、怒っても時間の無駄だと自分に言い聞かせ冷静さをなんとか取り戻す。


ティアに加え、自由気ままな犬っころと一緒に旅をしなければいけないことに、今さらながら先行きに不安しか感じられないのであった。


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