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21 企て【??視点】




 悔しい。

 質の良い、豪華な美しいドレスに、手入れの行き届いた肌に髪。大きな宝石のついた首飾りに耳飾り。あんな大きな宝石があんな子に似合うわけない。あんな豪華なドレスが、あんな子に似合うわけがない。


 ボサボサで汚い灰色の髪も、銀の糸の様に艶やかで、丁寧に結われていた。……信じられない!あんなに惨めに追い出してやったと言うのに……!

 本当のベリルは見窄らしくて、地味で、陰気臭い。それがベリル。


 沸騰する様な熱が、頭の中を煮詰めて行く。

 守られる様にアーノルド・トリトンの後ろに立つベリルが脳裏に焼き付いて離れない。


 グラグラと腹の奥が熱く、吐きそうだ。

 吸血領主に嫁いで、さぞ惨めな生活を送ってるんだろうと思っていたら、アーノルド・トリトン、トム・サラドルナ、第二王子に、「旦那様」と呼んだあの男。あの美しい男がベリルを買った吸血領主!?


 あのグズにそんなもの似合わない。

 私が。

 私こそ全部貰うべきものだわ……!







 そうだわ。

 奪ってやればいいんだ。

 ぜーんぶ。

 私の旦那様であるオリバー様だって、貴族はみんな愛人を作っていると言っていたわ。


 オリバー様も愛人は居るし、私にも居る。もう1人増えたってなんて事ない。悔しくなんてない。私が1番愛されているのだから。問題なんてない。


 ベリルなんかより私の方が絶対良いに決まってる。あんな女として役に立たない間抜けなグズより私の方が魅力的だもの。


 ふふ、楽しみ。


 ぜーんぶ全部奪ってやるんだから。


 大きな玄関ホールから出て行く一際目立つ2人を遠くから睨みつける。

 サイドにはアーノルド・トリトンとトム・サラドルナが居る。今は、手を出せない。


「見て!あれって騎士団長様と副団長様でしょう?素敵……、あのお二方は?とってもお美しいわ」

「まぁ、本当に麗しい王子様とまるでお姫様のよう……、アンバー様?」

「……」


 ギリ、と奥歯が軋む音がした。

 腹が立って仕方がない。

 口の中に血の味が滲み出す。

 そんなものは全く気にならなかった。

 周りから聞こえてくる賛美の声が煩わしくて仕方がない。あれが、あんなのがお姫様ですって?



「やぁ、どうしたんだいアンバー、君が熱心に他人を見るなんて」

「オリバー様」


 ゆったりと近づいてくるオリバー様の腕には、ニヤニヤとこちらを見る女が1人。目が合うとすぐに手を離して人混みに消えて行った。

 本当に吐き気がする。


「ああ、変わった領主か。おや、隣の女性は……」


 オリバー様のベリルを見る目がいやらしく歪む。どう思ったかなんて、聞きたくはないのでそれ以上は喋らない様に視界も唇も塞いでやった。


 ようやく視線が私に戻った時に、一つ頭に良い案が浮かぶ。

 昔からやってる遊びの一つだ。


 ふふ。

 ふふふふ。


「ああ、そうだ……、ねぇオリバー様。もう1人愛人は欲しくないかしら。なんだったら……奴隷でもいいのよ」



 あの場所が私のものに。


 すぐ奪ってやるんだから。


 ベリルの泣く姿が楽しみだわ。



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