後書きと、彼らのその後
最後までお読み下さり誠にありがとうございます。
作者のいちごのショートケーキです。普段は、別のペンネームを使っているんですが、今作は題材が重めなので、読者様にほっこりしていただけるように美味しそうなペンネームにしました。
さて、本作は第2次大戦中にナチスドイツで行われたユダヤ人への迫害と虐殺行為「ホロコースト」を題材にしましたが、私がこのホローストを初めて知ったのは小学5年生の時に、学校の図書室で読んだアンネ・フランクの伝記漫画です。
当時の私の戦争に関する知識は、漫画「はだしのゲン」と親族から聞いた戦争体験、国語で習った「一つの花」「ちいちゃんのかげおくり」などから得たもので日本のことばかりでした。
アンネ・フランクの伝記漫画は、少女漫画チックな可愛らしい絵で書かれていて、当時の私は何も知らずに「表紙の絵が可愛い!」というだけで読み始めました。
漫画を読んでいくと、家族に愛され大好きな友達に囲まれて幸せな生活を送っていた少女アンネが、突然始まった戦争とユダヤ人への迫害によって、彼女の平和な日常が壊されていくのがとても恐ろしかったです。
ゲシュタポから逃れるために、隠れ家での窮屈な共同生活も衝撃的でしたが、私が一番ショックを受けたのは、アンネ達が送られたアウシュヴィッツ強制収容所での生活です。収容所に着くと大好きなお父さんと隠れ家で恋をしたペーターと引き離され、頭の毛を全て剃られ丸坊主にされ、過酷な強制労働に、大勢の人間を殺すためのガス室、死体を焼くためだけの焼却炉…全てが、衝撃的な内容で、小5の私はこの漫画を初めて読んだ日は、怖くて眠れなくなってしまいました。
アンネは、15歳という若さで亡くなりました。最期は、収容所で飢餓と疫病に苦しみながら、たったひとりで亡くなりました。
当時の私は、何の罪もない女の子がユダヤ人というだけで、どうしてこんな酷い仕打ちを受けて、死ななければならなかったのか…怒りと悲しみでいっぱいになりました。子どもは、単純なので「ドイツ最低!」「ドイツ滅べ!」とドイツという国に対して、激しい怒りと憎しみを覚えました。特にアンネの隠れ家をナチスに密告した人間に対しては殺意すら覚えました…。
しかし、あるホロコーストに関する本に書かれていたアンネの父であるオットー・フランクさんの言葉で考え方が変わりました。(もう読んだのが10数年以上前なので一言一句同じではないのですが…)
「ドイツ人を憎んでも、隠れ家を密告した人間を恨んでも、何の意味もない。大切なのは、この悲劇を知って、悲しみと憎しみだけで終わらせずに、二度とこの悲劇を繰り返さないためにはどうしたらいいのか考えていくことが大切」というような感じのことを言っていて、私も考え方を改めました。
オットーさんの言う通り、悲劇を悲しみと憎しみだけで終わりにしてはいけないのです。今を生きる私達は、過去の過ちを知り、同じ過ちを繰り返さないためにはどうすればいいか考えて行動すること…それが戦争や差別のない平和な世界の実現につながって行くのです。
なので拙作「最後の手紙」を読んで、少しでもこのホローストについて関心を持っていただけると作者としては、大変ありがたいのです。
悲劇の歴史に関心を持って、知ろうとすることが平和への第一歩だと思います。今、まさに緊迫した世界情勢が続いています。私、個人の考えとしては某国の他国への武力を用いた侵攻は、絶対に許されないことだと思います。
それでは、作者のクソ長後書きを最後までお読み下さり本当にありがとうございます!
―――ここからは、『最後の手紙』の登場人物たちがその後どうなったかを書いていきたいと思います。
※「後編で完結でいい!」「人物達のその後は自分で想像して楽しみたい!」という読者様はここで読むのをお止めください。
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【ジーク】
激戦地スターリングラードで戦死。姉アンナに宛てた手紙はコートが燃えて消失し、届くことはなかった。だが、彼の唯一の遺品として軍帽が姉の元に届けられる。
【アンナ】
愛する夫と弟を失い、一時は絶望するが弟の遺品の軍帽の中に隠されていたハンスからの手紙を見つける。お腹の中には夫との子を身籠っており、後に無事出産する。
【ジークフリート】
アンナの息子。激動の冷戦時代を母と共に生き抜く。母から亡き父の過ちを聞き、父の犯した罪への贖罪のために自らも医師を目指し、多くの患者の命を救う名医になる。私生活では、愛する女性と結婚し子宝にも恵まれ幸せな家庭を築く。
【ハンス】
アウシュヴィッツから移された収容所で連合軍によって解放され、生還する。ショシャナの死を知り一度は命を絶とうとしたが、自分と同じように収容所から生還した未亡人(娘が2人いる)と後に再婚する。血の繋がりはなくても、再婚相手の娘やその孫たちに慕われ穏やかな余生を過ごす。
ジークのことは、終戦後もずっと気にかけており、直接会ってお礼をするために家族と協力して彼の居所を探していたが、名前も何も手掛かりになる情報を手に入れることは出来なかった。
【その後のお話】
時は流れて――――
ジークフリートの孫娘は、祖父から祖父の父と叔父が戦時中に強制収容所で働いていたことと、叔父ジークの遺品の軍帽に隠されていたハンスからの手紙のことを聞き、ホロコーストに興味を持ち大学でそれを専門に研究をしていた。
彼女は研究のために多くのホロコーストに関する資料や、収容所から生還した人々の手記集めていた。その膨大な資料の中から、収容所で祖父の叔父が助けたユダヤ人男性ハンスが自らの収容所での体験を書いた手記を見つける。
その手記の中でハンスは、収容所内で自分を助けてくれた看守がいたこと、彼が妻に書いた手紙を届けようとしてくれたこと、彼に会って直接あの時のお礼が言いたいと記してあった。
孫娘は、このハンスが祖父の叔父の軍帽に隠されていた手紙のハンスであると確信する。ハンスは、すでに他界していたが、彼の遺族と連絡を取ることができる。
そして、長い年月を越えて――かつて強制収容所で看守だった男の子孫と、囚人だった男の子孫が再会を果たす。
戦時中、囚人に銃口を向けていた看守の子孫と、看守に銃口を向けられていた囚人の子孫が――現代では、同じテーブルに着き、国籍や人種に囚われずに、お互いの先祖のことを語り合いながら仲良くお茶をする。
それは、残酷な戦争で命を奪われていった全ての人々が、思い描いていた平和な未来――――
現代を生きる私達が、守っていかなければならない平和な世界です。
2022.10.10 いちごのショートケーキ