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『なにか』が欠けていく

 旅を続けたけれど、ちっとも忘れ物は見つけられぬ。


 むしろ、自分の持っていた物まで喪失していくみたいだ。

 気持ちも消えていく。

 嬉しいとも寂しいとも思わず、ただただロボットのごとく足を進めるだけ。


 記憶も、気持ちも、全て無のデクノボー。


 それは一体、どうして人と呼ばれることを許されるのだろうと、少女は寝ても覚めても常々思い、不安だった。


 ざわつく胸を抑え切れず、苦しい。


 そのうち、自分はどうして旅をしているのだろうというのすら曖昧だと知った。

 そして少女は、このまま朽ち果てる運命であるのだと信じ込んでいた。


 その時、一人の男と出会った。

 占星術師と言っていた。

 男は思い詰める少女へ優しく、小さい声で「君の未来はある」と言った。


「強く望むのであれば、君自身の(うち)の部分はきちんと応え、聞き届けてくれるでしょう。僕は星を見る仕事をしてますけど、実際は星を見ずその人の心を見るんですよ。運命は、ありません。縛られているのじゃありません。自分で縛っちゃっているんです。決して諦めてはダメですよ。その呪縛を解けば、君は自由です」


 記憶を喪失した時よりずっと、少女は言葉では言いづらい物を足りぬと思っていた。

 それは自分の呪縛のせいだとしたら、解きほぐせるはずだった。


 少女は、己への不信、自己嫌悪の類の気持ちをやめてみた。


 そして改めて、決心する。この空白を満たす物を見つけようと。


 薄く微笑んだ少女。一方の占星術師は首肯すると、「幸運を祈ります」と言い残し去っていった。


 忘失(ぼうしつ)していたものを、少し取り戻したみたいだった。

『な』『に』『か』がない。

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